窓周りについて、散歩をしながら考えたこと
散歩をしながら考えたこと
窓まわりは「カーテンを選ぶ」のではなく、
「光・風・熱を設計する」ということ
私は毎朝、犬の散歩をしながら近所の住宅を眺めることがある。職業柄、外観のデザインや軒の出、窓の配置、植栽などが自然と目に入る。そんな中で、以前から感じていることがある。それは、設計者が考え抜いた窓が、完成した瞬間から、ごく普通のカーテンによって隠されてしまう住宅が非常に多いということだ。
昼間でも厚いドレープカーテンが閉じられ、レースのカーテン越しにしか外が見えない。窓はあるのに景色は見えず、せっかく設計した借景も生かされていない。私は、少しもったいないと感じてしまう。
もちろん、カーテンが悪いと言いたいわけではない。昔の住宅では、それが最も合理的な選択だった。アルミサッシ一枚ガラスの時代は、冬になると窓から冷気が入り込み、結露も発生した。厚いカーテンを掛けることで冷気を和らげ、暖房効率を上げることができた。
つまりカーテンには、断熱材の役割があったのである。しかし、住宅性能はここ二十年で劇的に進歩した。現在では樹脂サッシやLow-E複層ガラス、さらにはトリプルガラスまで普及し、窓そのものが非常に高性能になっている。断熱の主役はカーテンではなく窓そのものへ移った。
ここが大きな時代の変化である。
窓が担う四つの役割
私は窓には四つの役割があると考えている。
① 景色を取り込む
窓は基本、外の景色を楽しむために窓がある。庭の緑。空の色。雨の日の静けさ。四季の移ろい。これらは室内を豊かにする重要なインテリアである。カーテンを閉めっぱなしにすると、その価値は半減してしまう。
② 光を取り込む
自然光ほど美しい照明は存在しない。しかし光は量だけでなく質も重要である。現代では窓そのものにLow-E複層ガラスが入っているのは常識として、東の朝日。北側の柔らかな光。南からの安定した光。西日の強烈な光。同じ太陽光でも方位によって全く性格が異なる。だから窓まわりは、光を遮るのではなく、光を調整するという考え方が重要になる。
ロールスクリーンには遮光タイプもある。ゆっくり寝ていたい人にはおすすめである。ブラインドは羽根の角度によって光だけを柔らかくできる。障子は和紙全体で光を拡散し、部屋全体をぼんやり明るくする。
※特に注意したいのが、破れない様に和紙を樹脂(主に塩ビやPET)でラミネートコーティンしたワーロンお勧めしない。光が平面的になるからだ。和紙本来の良さが半減してしまう。破れたら張り替えたらいいだけ。いつも新しくできる。ワーロンの古くなったものはうらびれた居酒屋風になってしまう。
この違いを理解すると、窓まわりは単なるインテリアではなくなる。
③ 風を取り込む
最近はエアコン性能が向上し、窓を開けない暮らしも増えてきた。しかし春や秋の心地よい季節には、やはり自然の風を感じたい。ブラインドなら羽根を少し開くだけで風を通せる。レースカーテンは風をそこはかとなく通してくれる。一方、ロールスクリーンは下ろすと風を遮ってしまう。目的によって使い分ける必要がある。
④ 熱をコントロールする
実は最も重要なのがこれである。夏の暑さの約七割は窓から侵入すると言われている。ここで多くの人が勘違いしている。暑くなってからカーテンを閉めても、熱はすでに室内へ入っている。つまり、室内で熱を止めるのでは遅い。熱は外で止める方が圧倒的に効率が良い。
外部遮蔽という考え方
例えば帽子を思い浮かべてほしい。帽子を頭の上に被り日差しを遮る。住宅も同じである。熱は建物の外側で止めるべきなのである。その方法はいくつもある。日本人の知恵でもある軒やひさし、外付けの簾。ル・コルビュジエが提唱したブリーズ・ソレイユ。絶妙な角度で西陽を避け心地よう風を通す。夏場はネットにニガウリや朝顔など蔓性のものを這わせる。外付けルーバー。オーニング。秋に落葉する落葉樹や年中緑の常緑樹をうまく利用する。
特に西日は太陽高度が低いため軒や庇だけでは防ぐのが困難となる。だから西面には縦ルーバーや植栽が非常に有効になる。私は設計でも西面の日射対策をかなり重視している。
室内は調整装置になる
外側で熱を止めたら、室内は快適さを微調整する役割になる。例えば、ブラインドで光や視線や心地よい風を柔らかく通す。ロールスクリーンで視線や日差しを遮る。必要に応じて蜂の巣状に空気を包み込むハニカムスクリーンで断熱性を高める。和室なら障子で柔らかな光を楽しむ。特殊な例ではあるが、井桁に組んだ永田格子で陰影を楽しむ。つまり、室内側は快適性を整える装置なのである。
景色を美しく見せるために
私は窓は建築の額縁だと思っている。だから、窓にはできるだけ余計なものを付けたくない。ヒダの多いドレープカーテンは豪華に見える反面、建築そのものの美しさを隠してしまうことも少なくない。また日射反射しつつ景色を薄く取り込むミラーレースという優れものもある。近年のシンプルな住宅や木の家では、ロールスクリーンやブラインドのように存在感を抑えた方が建築は美しく見える。これらは好みではなく、建築全体の完成度の話でもある。
これからの窓まわり
私はこれからの住宅では、窓まわりの考え方そのものが変わっていくと思っている。これまでは、「どんなカーテンを付けようか」だった。しかしこれからは、「どうやって光を取り入れるか。」「どう風を通すか。」「どう視線をコントロールするか。」「どう熱を外で止めるか。」これを考える時代になる。窓まわりはインテリアではない。住宅性能であり、環境設計であり、暮らしの質を決める重要な建築要素なのである。私はこれからも、窓を一枚のガラスとしてではなく、人と自然をつなぐ装置として設計していきたい。
そして、家ができて、カーテン売り場へ行く前に一度だけ考えていただきたい。「この窓から、本当にコントロールしたいものは何だろう。」その問いから始まる家づくりは、きっと今までとは違った、より快適で美しい住まいにつながっていくはずである。
個人的意見であるが、羽の角度で光や視線を調整しつつも、風を通せるブラインドがおすすめである。開口部も美しい。色は主張のない白一択である。

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