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間取りだけではつくれない。

家づくりを始めると、どうしても間取りに目が向く。リビングは何畳にするか。キッチンはどこに置くか。収納はどれくらい必要か。洗濯動線はどうするか。もちろん、どれも大切なことである。けれど、家というものは、平面図の上だけに建つものではない。

たとえば、プランが変わることによって窓をひとつ動かす。それだけで、部屋に入る光が変わる。風の通り方が変わる。家具の置き方が変わる。そして、外から見た家の表情も変わる。壁をひとつ動かせば、構造が変わる。切妻の屋根を片流れに変えれば、外観だけではなく、夏の日射や冬の光、雨のかかり方まで変わってくる。家は、すべてがつながっている。だから、一つだけを良くしようとすると、どこかに無理が生まれることがある。

私は、家の設計はルービックキューブに少し似ていると思っている。一面だけを揃えても、完成ではない。こちらを動かせば、あちらが動く。間取りを整えながら、構造を見る。構造を考えながら、窓を見る。窓を考えながら、光と風を見る。光と風を考えながら、軒や屋根を見る。そして最後には、そこで暮らす人の姿に戻ってくる。何度も行ったり来たりしながら、少しずつ全体を整えていく。それが、本来の設計なのだと思う。

私たちは、この考え方を、「六面設計(Six-Face Design)」と分かりやすく呼んでいる。何か特別な設計方法を、新しく始めたわけではない。長いあいだ家をつくるなかで、当たり前のようにやってきたことに、ひとつ名前をつけただけである。

間取りだけで設計しない。外観だけを格好よくしない。性能だけを数字で追いかけない。構造だけを強くして終わらない。間取り、外観、構造、温熱、光と風、そして暮らし。それぞれを別々に考えるのではなく、一棟の家として整えていく。

言ってみれば、「一棟設計」である。部分ではなく、一棟を見る。そして、もう少し遠くから眺めれば、それは「全景」を設計することなのかもしれない。長く暮らしやすい間取りとは、どんなものか。窓から何が見えるのか。外から、その家はどう見えるのか。朝、どこから光が入り、夕方、どこに影が落ちるのか。夏にはどこから風が抜け、冬にはどこに陽だまりができるのか。そして十年、二十年と時を重ねたとき、その家がその土地の景色にどう馴染んでいるのか。

私たちが設計したいのは、図面の中だけの家ではない。そこで始まる暮らしと、その先にある景色まで含めた、一棟の家である。便利な間取りなら、AIでいくらでもつくれる時代になった。性能のいい家も、つくれるようになった。けれど、それらをひとつにつなぎ、全体を整え、美しい一棟にすることは、今でも人の仕事だと思う。一面だけでは、いい家にはならない。すべてがつながり、すべてが整って、ようやく一棟の家になる。「六面設計(Six-Face Design)」間取りではなく、家全体を設計する。そして、その先にあるものは、「そこに暮らす人の時間と、その土地の風景を、美しくつなぐ」という、ただ一つの思いである。

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