我々が自然素材を使う本当の理由
我々が自然素材を使う本当の理由
「自然素材の家」という言葉を、今でもよく耳にする。
無垢の木を使う。クロスではなく塗り壁を使う。自然由来の材料を使う。私たち長崎材木店も、昔からそういう素材を使って家をつくってきた。では、なぜ自然素材を使うのか。身体に優しいから。調湿してくれるから。環境にいいから。もちろん、それも理由のひとつである。
けれど、私たちが自然素材を使う一番の理由は、少し違う。時間を受け止めることができるからだ。無垢の床は、暮らしていれば傷がつく。陽に焼けて色も変わる。人がよく歩くところには艶が出てくる。新品の時と同じではない。けれど、不思議なものである。五年、十年と経った無垢の床を見ていると、新品にはなかった美しさが出てくる。左官による塗り壁もそうだ。光の当たり方によって表情が変わる。少しムラもある。職人の手の跡も残る。工業製品のように、すべてが均一ではない。だからこそ、光や時間を受け止めた時に、なんとも言えない表情が生まれる。
考えてみれば、私が昔から好きなものもそうだった。機械式の時計。古い車。年季の入ったテーブル。どれも新品だから好きなのではない。手を入れ、傷がつき、それでも大切に使われてきたものに惹かれる。なぜなのだろう。おそらくそこに、時間が残っているからだと思う。
今の世の中には、古くならないようにつくられたものがたくさんある。いつもピカピカで汚れにくい。傷がつきにくい。色が変わらない。手入れがいらない。それはそれで便利である。しかし、家は家電製品とは違う。十年使って買い替えるものではない。三十年、五十年。できれば、その先まで残ってほしい。だから私は、家に使う材料には、「古くならないこと」より、「美しく古くなること」の方が大切ではないかと思っている。
自然素材は完璧ではない。傷もつく。色も変わる。時には手入れも必要になる。しかし、その不完全さがあるから、人の暮らしを受け止めることができる。子どもがつけた床の傷。いつも手を掛ける柱の艶。陽に焼けた木の色。最初は気になっていたものが、いつの間にか、その家の景色になっている。それは「劣化」とは少し違う。家族がそこで暮らした時間が、家に刻まれていく。
私たちが自然素材を使う理由は、単に「自然だから」ではない。本物の素材には、時間を受け止める力があると思うからだ。そして、手入れをしながら長く使うことで、少しずつその家にしかない美しさへと変わっていく。新築した日が、一番美しい家ではなくていい。十年後には十年の美しさがあり、三十年後には三十年の美しさがある。
住む人と一緒に歳を重ね、「この家、いい感じになったな」そう思える家であってほしい。それが、我々が自然素材を使う本当の理由である。

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