大工と左官
大工と左官
今も、私たちの家づくりの主役は、大工と左官である。
大工棟梁が木を組み、家の骨格をつくる。
左官が鏝を握り、土や漆喰を塗り重ね、壁を仕上げていく。
一方は家を立ち上げ、もう一方は家の表情をつくる。
大工と左官は、古くから家づくりの双璧をなしてきた地域の職人である。
昔、大工棟梁は、家を建てるだけの人ではなかった。
職人たちを束ね、仕事を納め、ときには地域の相談役も担った。
左官もまた、土や砂、石灰といった身近な素材を見極め、その土地の気候に合った壁をつくる職人であった。
「大工を右官、壁を塗る職人を左官と呼んだ」という説がある。
土を塗って壁をつくる技術そのものは、縄文時代にまでさかのぼる。
また、「左官」という呼び名は、宮中の官職である「さかん」に由来するという説が有力とされている。ただし、その起源については諸説あり、今なお一つに定まってはいない。
けれども、その名の由来がどうであれ、彼らが日本の家づくりを長いあいだ支えてきたことに変わりはない。
いつの頃からか、大量生産や効率化という名のもとに、家づくりは大きく変わった。
木を見て、癖を読み、材を刻んでいた大工は、工場で加工された部材を現場で組み立てる仕事へと変わっていった。
左官の塗る壁は減り、早く、均一に仕上がるビニールクロスが家の内側を覆うようになった。
便利になった。
工期も短くなり、品質も揃えやすくなった。
しかし、その一方で、職人の手の跡や、素材が時間とともに変化していく味わいは、少しずつ家から失われていったように思う。
私たちは、今も地域の職人と家をつくっている。
大工が木を組み、左官が壁を塗る。
建具師が戸をつくり、板金職人が屋根を葺く。
木の癖を読み、鏝の加減を変え、建具の建て付けを見ながら、最後は人の手で納めていく。
そこにあるのは、単なる懐古趣味ではない。
自然の素材を扱い、その土地の気候を知り、長く使えるように手を尽くす。職人による家づくりには、今の時代にも必要な確かさがある。
手仕事だからこそ修理して使い続けられる。
工業製品だけではつくれないものがある。
図面や数字だけでは決められないものがある。
光の具合を見ながら塗られた壁。
木目を読んで組まれた柱と梁。
手に触れたとき、わずかに残る職人の仕事の跡。
それらは、完成したときがいちばん美しいのではない。
人が暮らし、手入れをし、時を重ねるほど、その家らしい表情を帯びていく。
家は商品である前に、地域の材料と地域の技によってつくられるものである。
だから私たちは、これからも大工と左官を家づくりの主役に置きたい。
大工、左官、建具師、板金職人。
地域に根を張り、黙々と腕を磨いてきた職人たちとともに、一棟ずつ家をつくっていく。
この家づくりを、いつまでも大切にしていきたい。

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