家づくりは、平面ジグソーパズルではなく、六面で考えるルービックキューブである
家づくりは、平面ジグソーパズルではなく、六面で考えるルービックキューブである
家づくりは、平面ジグソーパズルではない。
間取りだけを眺めていると、家は簡単にできるような気がする。「リビングはここ。」「キッチンはあそこ。」「収納をもう少し増やしたい。」「和室も欲しい。」さらに、プラン集やインスタなどで「この家の玄関廻りがいい」「あの家のパントリー収納を取り入れたい」「このプランのキッチン動線が便利そうだ」と、さまざまな住宅の良いところを組み合わせたくなる気持ちもよく分かる。
実は我々も一つのプランを仕上げる前にエスキース段階で何プランも錬ることがある。
しかし、その”いいとこ取り”を繰り返すと、建築全体のバランスは少しずつ崩れていく。性能や構造、外観の整合性が失われ、結果として、まるで部品だけを寄せ集めた「歪(いびつ)な改造車」のような家になってしまうことがある。紙の上では、どれも収まりそうに見える。しかし、家というものは平面ではなく紙の上には建たない。
私は建築を、よくルービックキューブに例える。一面だけを無理に収めようとすると、別の面が崩れる。収納を優先すれば、構造に無理が生じることがある。窓を増やせば、耐震性や断熱性能との折り合いを考えなければならない。景色を取り込もうとすれば、隣家との視線や日射の問題が生まれる。予算が変われば、計画全体を見直さなければならない。建築とは、そういうものなのである。
だから設計は、平面パズルではなく、六面で考えるルービックキューブである。家は3次元の立方体なの出来ている。一つの面だけを見ていては完成しない。六つの面を同時進行で整えながら、一つの立体として組み上げていく。
その六面とは何か。1.建主の想い。2.敷地の条件。3.耐震や断熱といった住宅性能。4.建築基準法や景観条例などの法規。5.街並みとの調和や周辺環境。6.そして予算。この六面は、それぞれが深くつながっている。例えば「窓を増やせば断熱性が落ちる」「空間の開放感を優先すれば構造に無理が出る」といったトレードオフの関係があったりと
どれか一つだけを優先すれば、必ず別のどこかに歪みが生まれる。だから設計者は、顧客の要望をそのまま図面に書き写す人ではない。六面すべてを見渡しながら、最も整合性が取れた答えへ導く案内人なのである。
そのために、私はまず土地を歩く。朝の光を見る。風の向きを感じる。道路から建物がどう見えるのかを確かめる。隣家の窓の位置を眺める。法規を調べ、敷地の可能性と制約を読み解く。土地は何も語らない。しかし、丁寧に向き合えば、多くのことを教えてくれる。
その声を聞かずに間取りだけを考えれば、出来上がるのは「家」ではなく「プラン」である。街を歩いていると、どこか違和感のある建物に出会うことがある。使い勝手は悪くない。性能も決して悪くない。それでも、どこか落ち着かない。その原因は、一面だけを揃えようとした設計にあることが少なくない。
家は、建主だけのものではない。何十年もその場所に建ち続け、街の景色となり、次の世代へ受け継がれていく。だから設計とは、一棟の建物をつくる仕事ではなく、その土地にふさわしい景色をつくる仕事なのだと私は考えている。平面パズルではなく、六面で考えるルービックキューブ。設計とは、その六面すべてを整えながら、顧客とともに最適な答えを探していく営みである。その難しさこそが、設計という仕事の奥深さであり、楽しさであり厳しさなのだと思う。
次回以降、気ままに徒然に「六面設計(Six-Face Design)」について書いていくことにしよう。
「六面設計① 建主の想い」
「六面設計② 敷地を読む」
「六面設計③ 性能はなぜ妥協できないのか」
「六面設計④ 法規が設計を変える」
「六面設計⑤ 街並みという設計条件」
「六面設計⑥ 予算は制約ではなく設計条件」

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