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タフなキッチン

タフなキッチン

人は見た目に騙される。家もそうだが、キッチンほどそのことを思い知らされるものはない。インスタやショールームへ行けば、照明に照らされた美しいキッチンが並ぶ。ピアノコーティングされた扉は美しく、人工大理石の白い天板は輝き、最新の設備が静かにこちらを誘惑する。しかし、美しいものほど、時として儚い。本当に良いキッチンかどうかは、手に入れたその日ではなく、五年後、十年後にわかる。私はそう思っている。

男はタフでなければならない。やや古典ではあるがレイモンド・チャンドラーの小説にそんな言葉がある。だが、本当に心に残るのは、その続きだ。「やさしくなければ生きている資格がない。」強さとは、力のことではない。困難から逃げず、約束を守り、傷ついても立ち上がること。そして、その強さを誰かのために使えることだ。私は、その言葉はキッチンにも当てはまる気がしている。

毎日、火や熱に耐え。水を浴びる。酸やアルカリにさらされる。油に汚れ、包丁が走り、重い鍋が置かれる。引き出しは一日に何十回も開き、閉じられる。家の中で、これほど働き続ける場所は他にない。だから、キッチンは美しくある前に、タフでなければならない。少々の傷では動じない。何年使っても狂わない。壊れても直せる。そんな道具であってほしい。究極はプロの厨房で使われる業務用のステンレスキッチンである。

傷は、使った証である。磨き上げられた新品より、毎日の食卓を支え続けた道具には、静かな風格が宿る。包丁が研ぎ継がれ、一生の道具になるように。、木の机が時を重ねて艶を増すように、良いキッチンもまた、年月によって完成していく。だから私は、キッチンの天板はステンレス一択と考えている。

厚みとスペックは熱によるたわみを考慮するとSUS304で1ミリの厚みは欲しい。バイブレーション仕上げによるヘアラインの細かな筋は、小さな傷を受け入れながら、そのすべてを風景に変えていく。使い込むほどに、その家族だけの表情になる。派手さはない。だが、飽きることもない。人も道具も、そういうものではないだろうか。

もう一つ、大切なのは見えないところだ。引き出しを支えるレール。金物の精度や強度。交換修理できるパーツであるかどうか。こういうものは、ショールームでは話題になりにくい。だが、人生も家づくりも、本当に大切なものは案外、人の目につかないところにある。「引き出しは一日に30〜50回も開閉される。20年で言えば約30万回だ。だからこそ、オーストリアのブルム社製のような高精度レールが欠かせない。」骨格がしっかりしている人は、歳を重ねても崩れない。見えないところが丈夫な家も、長く人を守り続ける。

キッチンも同じだ。流行は、毎年変わる。色も、形も、設備も変わる。だが、本質は変わらない。丈夫であること。修理できること。長く使えること。そして、時を重ねるほど味わいが深くなること。私は、それこそが本当の豊かさだと思う。だから、キッチンは見た目で選ばない。二十年後も、変わらず家族の食卓を支え、静かに働き続けている。そんな姿を想像して選ぶ。

それが、後悔しないキッチン選びだ。私は、そんなタフなキッチンが好きである。

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