タフなシステムバス
タフなシステムバス
ものには、静物としての生きざまが見えてくることがある。人にもあるように、道具にもある。私は建築設計という仕事をして三十年以上になるが、良い家とは豪華な家ではないと思っている。流行の設備を並べた家でもない。毎日使い、何十年も家族を支え続けるものが、黙って役目を果たし続ける家である。
浴室も、その一つだ。一日の終わりに体を洗い、湯船につかり、疲れを落とす。たったそれだけの場所だが、その「たったそれだけ」を十年、二十年と続けるのは、案外難しい。だから私たちは、見た目だけで風呂を選ばない。長崎材木店一級建築士事務所が別注でオリジナル仕様のユニットバスを採用した理由は、そこにある。
ところで住宅業界には、不思議な慣わしがある。定価を高く見せ、仕入れ値、掛け率を低く見せたり、大きく値引きをした様に見せて、お客様に「得をした」と感じてもらう。もちろん、それが悪いとは言わない。商売にはそれぞれの商売のやり方がある。
だが、私はそのやり方に昔から少し違和感を覚えていた。良いものなら、最初から正直な価格で売ればいい。そう考えていた。派手な売り方もしない。大幅な値引きをしない。
住宅会社やリフォーム会社からすると、利益の調整もしにくい。売るのも楽ではない。決して扱いやすいメーカーではない。それでも、その姿勢を何十年も変えない。あえて社名は伏せるがタフな会社である。
私は、そういう会社が好きだ。人も会社も、本当の強さは、こだわりを曲げないところにある。
さて、そのこだわりを見てみよう。システムバスの床であるが、その生き方が表れている。
一層目スチール→二層目ウレタン断熱材→三層目ステンレス→そして、その上の四層目には磁器タイルが・・・・。磁器タイルを床パネルへと組み付ける工程には、なんと人の手による作業が含まれており、品質を支える重要な工程となっているとのこと。
大量生産時代の現代において、わざわさ人の手が入るなんて。
四層構造という、いかにも面倒なつくりだ。
今時、システムバスの床にタイルを、というには理由がある。タイルは劣化することがないからである。おまけに排水周りはオールステンレスでできている。さらに汚れがつきにくく掃除がしやすいように壁にはガラスコーティングが施されている。本当にタフなユニットバスである。
今の時代なら、もっと効率よく作れる方法はいくらでもある。普通どうり、プレス一体形成により機械で大量生産したほうが速い。人件費も安く済む。けれど、彼らはそうしない。効率より品質。合理性より耐久性。その選択は、一見すると不器用に見える。だが、本当に良いものは、たいてい少し不器用だ。手間を惜しまない。見えないところで妥協しない。そういうものだけが、長い年月を静かに生き残っていく。
私は家づくりも同じだと思っている。完成した日のインスタ写真だけが美しい家は、案外早く色あせる。反対に、十年、二十年と暮らすほど味わいが深くなる家は、完成した日は少し地味なくらいがちょうどいい。派手さより、品。流行より、本質。不易流行。それが長く愛される理由なのだと思う。
私たちは設備をブランド名で選ばない。値引き率でも選ばない。カタログの華やかさでもない。その会社が、何を大切にしてものづくりをしているのか。そこを見る。人柄を見るように、会社を見る。その結果、その会社と別注仕様のオリジナルのシステムバスを作ることにした。
それは浴室を選んだというより、思想がシンクロする会社を選んだのかもしれない。家は完成した日がゴールではない。そこから何十年という暮らしが始まる。だからこそ、私は、派手さではなく、本物を選ぶ。それが、作り手の矜持(きょうじ)であると思う。

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