日曜日の音楽事情 音のタイムマシーン。
日曜日の音楽事情
若い頃から音楽を聴くのが趣味であった。
メインはジャズ、ブルース、70年代ロックをレコードで聞いていた。その後、家族もできて仕事も忙しくなりしばらく音楽と遠ざかっていた時期もあった。もちろんiTuneなどの配信の音楽も聴く、確かに便利である。しかし聴き込むと言うことがない。わかりやすく言うとつまみ食いである。
2年前、母親が施設に入ったのをきっかけに築140年の実家を自分のセンスでフルリノベした。現在リノベーションのショウハウスとして公開している。和室と蔵にオーディオ機材をおいてコレクションのレコードを聴けるようにしているのだが面白いのは、同じレコードでも部屋が変わると、聴こえ方が変わることだ。ロックやブルースは蔵で聴くのがいい。音の塊が前へドンと出てくる。ジャズは和室がいい。楽器の音が粒立ち良く聴こえる。スピーカーの違いもあるだろうが、部屋そのものが音を変えているのかもしれない。
時は2026年、現代においてはイヤホン、スマートフォンやパソコンの音でも良い音楽は聴ける。しかしなぜにオーディオ装置で聴くのかというと、それはアーティストを感じていたいから、つまりオーディオ装置で聞くと言うのは、あたかも目の前で自分のためだけにミュージシャンが演奏してくれると言うのを感じていたいからあんな馬鹿でかい装置で聞くのである。
60年前のコルトレーンの熱いソロやジョン・リー・フッカーの肉厚の声をかぶりつきで聴きたいからである。
言うなれば音のタイムマシーン。
針を落とすと目の前にミュージシャンが現れて自分のためだけに演奏してくれる。例えば小さなジャズクラブ、ライブハウス、録音スタジオと場所は変わるのだが一番いい席に陣取って最高の演奏を聴かせてくれる。至福の時間である。断っておくが私はオーディオマニアではないが、この至福のためにマニアは心血を注ぐのである。
鳴らす音はアナログ録音一発録りの音源が良い。デジタル録音ではなく1985年以前の録音、私がつい針を落とすのは、50~70年代の録音だ。ジャズならドラムにベース、ピアノ、テナー、トランペットくらいの編成、ロックならもちろんリズムギターとリードギターは欠かせない。弾き語りなどもいい。できるだけ少ない編成の方が音は楽しめる。
ここからは身もふたもない話をするのだが、そもそも音量を上げて聴かなければアーティストを感じることは難しくなる。悲しいことに、現代の住宅事情は昭和のおおらかな家づくりの時代と大きく変容してしまった。オーディオを鳴らすとまず近隣の苦情の種となる。これが現代のオーディオ衰退の原因であろう。なかなか難しい時代でもある。
勝手な想像であるがもしかして若者はフェスやライブなどで、その鬱憤を晴らしているのかもしれない。一概に最近の若いやつはと言うのも、昭和の親父の短絡的な発想となるのであろう。昔の住宅事情は良かったと懐古するのも良いが、その一方で好きな音楽を聴き身を任せる時間も、暮らしの楽しみであり大切な時間だと思う。レコードを聴きながら、そんな時間を受け止められる住まいをどうつくっていけるだろうかと考える。針が終わりに来ても、しばらく席を立たずに。

092-942-2745