空を狙う装置
空を狙う装置
冬が近づくと、太陽の高さが低くなる。日差しはやわらかくなり、部屋の奥まで届くようになる。床や壁に、季節の色があらわれる。
わが家の南側には、三メートル先に二階建ての住宅が建っている。隣家が近ければ、光も景色も限られてしまう。庭をつくっても、目の前に壁が迫っている。そんな土地では、空を狙うことを考える。
そこで有効なのが、吹き抜けだ。
吹き抜けの下に立つと、家の中に空が生まれる。高い位置の窓から見えるのは、ただの青い空ではない。流れていく雲や、移ろう光、自然や季節の気配を感じることができる。冬には、差し込んだ光が壁を伝い、家の奥まで降りてくる。庭からの光だけでは届きにくい場所にも、明るさが広がっていく。
何もない場所に、光が落ちる。声が届く。人の気配が残る。
光や家族の気配をつなぐ一方で、温熱環境や音の伝わり方にも配慮がいる。その両方を考えながら、設計計画をしていく。
床を張れば、部屋や収納として使える。その面積を、吹き抜けは空のために空けておく。部屋や収納の広さだけで考えれば、もったいなく見えるかもしれない。けれど、その余白があるから、家の中に光と空が入り、暮らしに奥行きが生まれる。
もちろん、隣地との間に十分な距離があり、ほかの窓から景色や光を取り込めるなら、吹き抜けを設けず、その分を部屋として使うほうが合理的な場合もある。吹き抜けは、どの家にも必要なものではない。土地の条件を見て、何を得るために空間を空けるのかを考えることが大切だ。
ただ天井を高くするためのものではない。
例えばわが家のように、南側の隣家まで三メートルほどしか離れていない土地でも、空を見上げ、景色を迎えることが出来るようになる。
空の景色を狙う装置。それが、吹き抜けなのだと思う。

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