長崎材木店一級建築士事務所が「造作キッチン」をおすすめする理由は、単なる機能性だけでなく、キッチンを「暮らしを整える設計の一部」と考えているからです。

長崎材木店一級建築士事務所が、造作キッチンをおすすめする理由
設計士の西田です。
家づくりの打ち合わせで、よく聞かれる質問があります。
「造作キッチンとシステムキッチン、結局どっちがいいんですか?」というものです。
結論から言うと、私たちは 造作キッチンをおすすめすることが多い。
理由は単純で、キッチンは“設備”である以前に、暮らしの中心だからです。
システムキッチンには、当然メリットがあります。
各メーカーが最新の工夫を詰め込み、掃除のしやすさ、収納の合理性、標準化された使いやすさを高いレベルで実現している。
迷ったときに「外しにくい」選択肢でもあります。
ただ、家全体を「暮らし」として設計する立場から見ると、
キッチンが“完成品の箱”であることが、
ときに空間の自由度を少し下げてしまう場合があります。
そこで私たちは、造作キッチンという選択肢をご用意しています。
1)ダイニングと“同じ素材”でつながり、空間が一体になる
キッチンはリビング・ダイニングと視線を共有します。
つまり、目立つ場所に、毎日ずっとある。
だからこそ、キッチンだけがテカテカした素材や強い色で浮いてしまうと、空間の静けさが壊れてしまう。
造作なら、床や建具、家具、ダイニングテーブルと同じ面材・同じトーンでまとめることができます。
「キッチンが主張しない」のではなく、
空間としての質が上がる。
この差は、住んでからじわじわ効いてきます。
2)“規格に合わせる”のではなく、“動作に合わせる”ができる
システムキッチンは規格サイズが基本です。
もちろんそれでも十分使えるのですが、人の料理の仕方は一人ひとり違います。
下ごしらえ中心の人。
盛り付けを大事にする人。
片付けの導線が命の人。
家族と会話しながらやりたい人。
逆に、こもって集中したい人。
造作キッチンは、その癖をそのまま設計に変換できます。
つまり、キッチンが「使う人の型」になっていく。
これは、暮らしのストレスを減らす一番の近道です。
3)高さを“ミリ単位”で決められる
キッチンの使いやすさは、天板の高さで決まります。
一般に「身長÷2+5cm」などと言われますが、実際は腕の長さや姿勢、調理スタイルで変わります。
メーカー品は、選択肢が限られ、微調整は台輪で吸収することも多い。
造作なら、本当にちょうどいい高さにできます。
家族が複数人立つなら、その中間を取る設計もできる。
この“疲れにくさ”は、毎日の積み重ねで大きな差になります。
4)ゴミ箱を「一番使いやすいシンクの下」に組み込める
これがいちばんのメリットかもしれません。
料理中のゴミは、シンク周りから出ます。
だったら、ゴミ箱はシンク下が一番合理的です。
ところが、システムキッチンでは「シンク下ゴミ箱」が想定されていないことも多い。
造作なら、最初からゴミ箱のサイズに合わせて収納を設計できます。
キッチンが散らからない家は、暮らしも散らかりにくい。
ここは、地味ですが強いポイントです。
5)背面収納・冷蔵庫の“出っ張り問題”を整えられる
キッチンの背面は、意外と雑然としやすい場所です。
一般的な背面カウンターの奥行きは45cm。
一方、冷蔵庫は70cm前後。
つまり冷蔵庫だけが前に出て、動線の邪魔になり、視界もうるさくなる。
造作なら、背面全体の奥行き・見え方・納まりを設計で整えられます。
冷蔵庫の位置、家電棚の高さ、通路幅、扉の開きまで含めて、
**“生活感を見せない設計”**が可能になります。
6)ダイニング家具と一体でつくれて、子育ての散らかりに効く
子育て期の家は、ダイニングが学習机になります。
ノート、鉛筆、消しゴム、プリント…置き場がないと、テーブルが永遠に片付かない。
造作キッチンは「キッチン単体」ではなく、
ダイニング脇の収納、スタディコーナー、家事カウンターまで含めて一体で設計できます。
結果、暮らしが整い、家族のストレスが減る。
これは“キッチンの性能”ではなく、家の設計力の話です。
7)お気に入りの素材・設備を自由に選べる
造作キッチンの魅力は、「これが選べます」ではなく、
**「好きなものを組み込めます」**に近い。
タイルの質感。
木の面材。
取っ手の手触り。
レンジフードの形。
水栓の佇まい。
シンクの素材。
毎日、触れる場所だからこそ、気に入ったものにする価値がある。
キッチンは、家の中で“道具”でありながら、“景色”でもあります。
8)何十年でも使い続けられる。壊れたら“そこだけ”替えられる
システムキッチンは、製品として完成度が高い一方で、
廃番や仕様変更が進むと「部品がない」問題が起きます。
造作キッチンは、設備を組み合わせているので、
IHはIHとして替える。
水栓は水栓として替える。
扉は扉として直す。
つまり “家の寿命”に合わせて更新できる。
ステンレス天板も、厚みのあるものを選べば何十年でも持つ。
傷が気になるなら磨けばいい。
この感覚は、道具を育てる感覚に近いと思っています。
ただし、造作キッチンには「条件」がある
造作は万能ではありません。
おすすめするからこそ、正直に言います。
使い方の希望を、ある程度言語化する必要がある
木の面材などを使う場合、蜜蝋などのメンテナンスが必要になる
設計者・大工・家具屋・設備屋の技量が揃わないと成立しない
初期コストは上がることがある(ただし長い目では合理的なことも多い)
だから私たちは、造作キッチンを「オプション」ではなく、
設計の一部として丁寧にヒアリングし、図面化し、現場で作り込みます。
キッチンは、家づくりの“価値観”が出る場所
キッチンを見ると、その家が「何を大切にしているか」が分かります。
見栄えなのか。合理性なのか。掃除のしやすさなのか。
それとも、暮らしの手触りなのか。
造作キッチンは、暮らし手の「こう生きたい」が入る場所です。
だから私たちはおすすめします。
キッチンに立つ時間が、少しだけ誇らしくなる。
そんな場所を、家の中心に置きたいものです。