照明の失敗例と成功例 〜暮らしの質を左右する”あかり”設計〜
こんにちは。福岡東スタジオ設計士の小柳です。
住まいの照明は、ただ部屋を「明るくするためのもの」ではありません。光の質や方向、色温度や配置の工夫ひとつで、空間の印象や居心地がまるで変わります。照明は、素材の陰影を際立たせ、暮らしの「リズム」と「感情」に作用する、住まいにおける“見えない設計”なのです。
本稿では、設計士の視点から、実際の「失敗例と成功例」を対比しながら、照明計画における注意点や工夫のポイントを詳しく解説します。
■ 失敗例1:「ただ明るいだけ」のLDK
✖︎ 失敗の要因:
- 天井の中央にシーリングライト1灯だけ
- 色温度は昼光色(青白い光)で冷たい印象
- テーブルやソファ周りに光のアクセントなし
- 間接照明や調光機能がない
✖︎ 結果:
- 全体は明るいが“のっぺり”した印象
- 食事も団らんも、すべて同じ照明で過ごすため空間に変化がない
- 壁や家具の素材感が活かされず、生活感だけが目立つ
■ 成功例1:「シーン」を切り替える光の使い方
◎ 成功の工夫:
- ダイニングにはペンダントライト(電球色)を下げ、温もりある食卓を演出
- キッチンは昼白色のダウンライトと間接照明で手元を明るく
- リビングには調光可能な間接照明+スタンドライトでリラックス感を
◎ 結果:
- 食事の場にはあたたかな雰囲気が生まれ、会話も自然と弾む
- 家事や読書など“作業”にはしっかりと明るさが確保されている
- 夜のリビングは落ち着いた光で、くつろぎの時間が演出される
ポイントは「明るさ」ではなく、「用途と時間に応じたあかりの演出」です。
■ 失敗例2:子ども部屋の照明が単一
✖︎ 失敗の要因:
- 天井に昼光色のシーリングライトのみ
- 学習机やベッドサイドに個別の照明がない
- 調光や色温度の調整ができない
✖︎ 結果:
- 学習時はまぶしすぎて集中しにくい
- 就寝前にも昼光色の光が残り、体内リズムが乱れる
- 長時間過ごすことで目の疲れやストレスにつながることも
■ 成功例2:成長に寄り添う照明計画
◎ 成功の工夫:
- 学習机には昼白色のデスクライトで集中力アップ
- ベッドサイドには電球色の間接照明でリラックス感を
- 主照明は調光・調色可能でシーンに応じて切り替え
◎ 結果:
- 子ども自身が“光の違い”を体感し、生活リズムを自然と覚える
- 成長に合わせて照明の使い方も変化できる柔軟性
- 空間の使い分けが自然にできるようになり、部屋に愛着も湧く
■ 成功する照明設計のポイント:”陰影”のコントロール
照明の本質は「照らす」ことではなく、「影をつくること」です。影があるからこそ、素材に奥行きが生まれ、空間にリズムが生まれます。
- 間接照明を壁や天井に当てて“面”を柔らかく浮かび上がらせる
- 光源が見えないように器具を配置することで、落ち着いた印象に
- 家具や素材の陰影を活かして、“彫刻的”な空間演出を狙う
陰影が美しい家には、不思議と「静けさ」と「豊かさ」が感じられるものです。
■ よくあるQ&A|照明設計のFAQ
Q:LDKで失敗しない色温度の選び方は?
A:ダイニング=電球色、キッチン=昼白色、リビング=電球色または温白色が基本。 空間ごとの目的と時間帯の過ごし方に合わせて調整するのが理想です。
Q:天井照明1灯だけではダメですか?
A:天井照明1灯では空間が“平坦”になりやすく、立体感や居心地が損なわれます。 ダウンライト・間接照明・フロアランプなどを組み合わせて、陰影と奥行きを演出するのが鍵です。
Q:間接照明はコストが高いのでは?
A:一部の器具は割高に見えますが、効果は絶大です。 特に天井や壁を美しく演出したい場合、後から追加するよりも新築・リノベ時に計画的に導入する方が効率的です。
Q:調光・調色機能は必要ですか?
A:暮らしのシーンが多様化する今、照明も“変化する”のが当たり前。 日中・夜間、家族団らん・一人時間など、時間や気分に応じて照明を切り替えられるのは大きな利点です。
■ まとめ:照明は“暮らしの舞台照明”
照明は「光の家具」であり、「感情を照らす舞台装置」です。
照明計画の成功とは、単に明るさを確保することではなく、
- 空間に陰影を与えること
- 暮らしのリズムに寄り添うこと
- 家族の感情に静かに働きかけること
そのすべてを見据えて設計された照明が、人の暮らしを格段に豊かにしてくれます。
今お住まいの方も、これから家を建てる方も、
「光の意味」から暮らしを見つめてみませんか?
照明は、ただの設備ではなく、暮らしを育てる“物語の一部”なのです。
私たち長崎材木店一級建築士事務所は、“より美しく、すみ継ぐ”という思想のもと、福岡で自然素材の注文住宅を、設計から施工まで一貫して手がけています。ただ家を建てるのではなく、暮らしをかたちにすることを何より大切にしています。「福岡で家を建てるなら、長崎材木店 一級建築士事務所」──そう言っていただけるように。