── 光を「量」でなく、「質」で捉える家づくり
こんにちは。長崎材木店一級建築士事務所・設計士です。
家づくりでは、「南向きのリビングがベスト」「日当たり=快適」という考え方が根強くあります。
しかし、私たちはそれだけでは暮らしの“深さ”や“余白”は生まれないと考えています。
そのヒントとなるのが、北側の窓です。
北側から入る光は、直射日光ではなく“空からの反射光”。
これにより、1日を通して光の質がほとんど変化せず、空間に落ち着いた明るさが広がります。
目が疲れにくい
光のムラが少ない
壁や素材の“陰影”が美しく出る
これはアトリエや画家のスタジオで、北向きの天窓がよく使われる理由でもあります。
南や西の窓は、季節や時間によって強い日射と暑さ・まぶしさをもたらしますが、北側の窓はそれがありません。
夏でも直射日光が入らず、室温が上がりにくい
冬も光量は安定し、寒さはサッシ性能で制御できる
温度変化が穏やかなことで、ヒートショックのリスク軽減にもつながります。
北側の光は、**影の境界が柔らかい“ソフトシャドウ”**を生みます。
これが漆喰、無垢材、和紙、タイルなどの質感を一層引き立てます。
塗り壁の表情がふんわりと浮き上がる
木の導管や手触りの「温度」が光に映る
美術館のように、静けさの中で“素材が語り出す”
これは単なる採光ではなく、“空間の気配”を設計する行為です。
北側は一般的に“裏手”にあたるため、隣家や道路からの視線が少なく、高窓やスリットで採光しながら視線をコントロールしやすい。
トイレ・洗面所・階段などにも安心して開口部が取れる
高い位置からの採光で、外の景色よりも「空」を切り取る
閉じた空間でも、光で“開く”ことができる
これは、外に向かって開くのではなく、「内なる静けさ」を設計するという思想です。
北の窓は「光の移ろい」ではなく、「空の色の変化」に敏感です。
朝は白んだ空と雲
夕方はブルーグレーから紺へと移ろう空
雨の日には淡い銀灰色の空間が広がる
つまり、生活に“時間の情緒”が添えられる窓なのです。
朝起きて顔を洗うとき、柔らかい自然光が鏡を照らす
タイル・左官・木のコントラストが美しく浮かぶ
日中は照明いらず、夜は間接照明と融合して静かな空間に
壁際に3本の縦スリット。上から斜めに光が落ち、階段に陰影が生まれる
家族が移動するたびに、光の中に“風景”ができる
家そのものが、暮らしの舞台になるような設計
空だけを切り取るような配置で、空間が“呼吸”する
窓から雲が流れ、月が差す夜も美しい
家の中にいながら、自然とつながっている実感が得られる
課題 | 解決策・工夫 |
---|---|
光量不足に感じることも | 白い天井・壁、反射を意識した床材、FIX窓の活用 |
冬場の冷気 | 樹脂サッシ+Low-Eガラスの採用(熱還流対策) |
景色の抜けがない場合 | 空・樹木・塀の配置で「光と影」を演出 |
暗く感じる場合の対処 | 補助照明や間接照明と組み合わせて“質のある明るさ”に |
Q:北側の窓だけで、日中の照明なしでも過ごせますか?
A:設計と仕上げ材の工夫次第で可能です。反射・拡散・光の導線を意識した設計で、昼間の生活に照明が不要なほど明るさを確保できます。
Q:冬に寒いのでは?断熱性は大丈夫?
A:現在の高性能サッシ(樹脂+Low-Eガラス)であれば、**熱のロスは最小限に抑えられます。**むしろ、日射熱を避けられる北窓は冷暖房の安定にも貢献します。
Q:北の窓は景色が望めないのでは?
A:むしろ、景色ではなく「空の色」や「光の表情」に価値があります。暮らしの中の“間”や“奥行き”をつくる要素として設計するのが理想です。
Q:北側に窓を設けるなら、どんなカーテンが良いですか?
A:視線対策が少ない分、レース不要のFIX窓や障子など“設え”としての工夫が映えます。むしろカーテン不要の“美しい抜け”を活かす設計をおすすめします。
北側の窓は、「心に届く光」を設計するということ
南や東の光が“生活を支える光”なら、
北の光は“心を静かに満たす光”。
静けさ、美しさ、質感、そして時間の気配。
これらを大切にしたい方にこそ、北の窓はおすすめです。
私たち長崎材木店一級建築士事務所は、“より美しく、すみ継ぐ”という思想のもと、福岡で自然素材の注文住宅を、設計から施工まで一貫して手がけています。ただ家を建てるのではなく、暮らしをかたちにすることを何より大切にしています。「福岡で家を建てるなら、長崎材木店 一級建築士事務所」──そう言っていただけるように。