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【保存版】“北側の窓”という美学

【保存版】“北側の窓”という美学

── 光を「量」でなく、「質」で捉える家づくり

こんにちは。長崎材木店一級建築士事務所・設計士です。

家づくりでは、「南向きのリビングがベスト」「日当たり=快適」という考え方が根強くあります。
しかし、私たちはそれだけでは暮らしの“深さ”や“余白”は生まれないと考えています。

そのヒントとなるのが、北側の窓です。


■ 北側の窓がもたらす「5つの美しい効果」

1. やわらかく、安定した拡散光

北側から入る光は、直射日光ではなく“空からの反射光”
これにより、1日を通して光の質がほとんど変化せず、空間に落ち着いた明るさが広がります。

  • 目が疲れにくい

  • 光のムラが少ない

  • 壁や素材の“陰影”が美しく出る

これはアトリエや画家のスタジオで、北向きの天窓がよく使われる理由でもあります。


2. 季節に左右されない“快適さ”

南や西の窓は、季節や時間によって強い日射暑さ・まぶしさをもたらしますが、北側の窓はそれがありません。

  • 夏でも直射日光が入らず、室温が上がりにくい

  • 冬も光量は安定し、寒さはサッシ性能で制御できる

温度変化が穏やかなことで、ヒートショックのリスク軽減にもつながります。


3. 素材の質感を引き出す「陰影設計」

北側の光は、**影の境界が柔らかい“ソフトシャドウ”**を生みます。
これが漆喰、無垢材、和紙、タイルなどの質感を一層引き立てます。

  • 塗り壁の表情がふんわりと浮き上がる

  • 木の導管や手触りの「温度」が光に映る

  • 美術館のように、静けさの中で“素材が語り出す”

これは単なる採光ではなく、“空間の気配”を設計する行為です。


4. プライバシーと自然光の両立

北側は一般的に“裏手”にあたるため、隣家や道路からの視線が少なく、高窓やスリットで採光しながら視線をコントロールしやすい

  • トイレ・洗面所・階段などにも安心して開口部が取れる

  • 高い位置からの採光で、外の景色よりも「空」を切り取る

  • 閉じた空間でも、光で“開く”ことができる

これは、外に向かって開くのではなく、「内なる静けさ」を設計するという思想です。


5. 時間とともに“情緒”が増す光景

北の窓は「光の移ろい」ではなく、「空の色の変化」に敏感です。

  • 朝は白んだ空と雲

  • 夕方はブルーグレーから紺へと移ろう空

  • 雨の日には淡い銀灰色の空間が広がる

つまり、生活に“時間の情緒”が添えられる窓なのです。


■ 実例紹介:長崎材木店での“北窓の美学”

◎ ケース①|洗面に北高窓+間接照明

  • 朝起きて顔を洗うとき、柔らかい自然光が鏡を照らす

  • タイル・左官・木のコントラストが美しく浮かぶ

  • 日中は照明いらず、夜は間接照明と融合して静かな空間に


◎ ケース②|ギャラリー階段 × 北スリット窓

  • 壁際に3本の縦スリット。上から斜めに光が落ち、階段に陰影が生まれる

  • 家族が移動するたびに、光の中に“風景”ができる

  • 家そのものが、暮らしの舞台になるような設計


◎ ケース③|勾配天井の北側FIX窓

  • 空だけを切り取るような配置で、空間が“呼吸”する

  • 窓から雲が流れ、月が差す夜も美しい

  • 家の中にいながら、自然とつながっている実感が得られる


■ 設計上の注意点とプロの工夫

課題 解決策・工夫
光量不足に感じることも 白い天井・壁、反射を意識した床材、FIX窓の活用
冬場の冷気 樹脂サッシ+Low-Eガラスの採用(熱還流対策)
景色の抜けがない場合 空・樹木・塀の配置で「光と影」を演出
暗く感じる場合の対処 補助照明や間接照明と組み合わせて“質のある明るさ”に

■ よくあるご質問(FAQ)

Q:北側の窓だけで、日中の照明なしでも過ごせますか?
A:設計と仕上げ材の工夫次第で可能です。反射・拡散・光の導線を意識した設計で、昼間の生活に照明が不要なほど明るさを確保できます。


Q:冬に寒いのでは?断熱性は大丈夫?
A:現在の高性能サッシ(樹脂+Low-Eガラス)であれば、**熱のロスは最小限に抑えられます。**むしろ、日射熱を避けられる北窓は冷暖房の安定にも貢献します。


Q:北の窓は景色が望めないのでは?
A:むしろ、景色ではなく「空の色」や「光の表情」に価値があります。暮らしの中の“間”や“奥行き”をつくる要素として設計するのが理想です。


Q:北側に窓を設けるなら、どんなカーテンが良いですか?
A:視線対策が少ない分、レース不要のFIX窓や障子など“設え”としての工夫が映えます。むしろカーテン不要の“美しい抜け”を活かす設計をおすすめします。


■ 結びに──

北側の窓は、「心に届く光」を設計するということ

南や東の光が“生活を支える光”なら、
北の光は“心を静かに満たす光”。

静けさ、美しさ、質感、そして時間の気配。
これらを大切にしたい方にこそ、北の窓はおすすめです。


私たち長崎材木店一級建築士事務所は、“より美しく、すみ継ぐ”という思想のもと、福岡で自然素材の注文住宅を、設計から施工まで一貫して手がけています。ただ家を建てるのではなく、暮らしをかたちにすることを何より大切にしています。「福岡で家を建てるなら、長崎材木店 一級建築士事務所」──そう言っていただけるように。

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