こんにちは、設計士の小柳です。
津屋崎で工事を進めていたE様邸が無事に竣工いたしました。
外構工事はこれからではありますが、一足先に建物内部をご紹介させていただきます。
今回のお住まいでは、高さ設計に特にこだわりました。たとえば、先日ブログでもご紹介した一枚板は、美しい造作カウンターへと変身。作業や手仕事にちょうどよい高さで設計しています。
では、高さ設計にはどんな理論があるのでしょうか? いくつか、設計時の基準をご紹介します。
キッチンで作業をしていて「腰が痛いな」と感じたことはありませんか?
その原因のひとつが、作業台の高さです。
私たちは、身長×0.55という「重心の高さ」に基づいて設計しています。
たとえば、身長171.5cmの方なら 934mm(約93.4cm)がベストな高さ。
棚の上限:身長×1.17(171.5cmの場合 2006mm)
引き出しの上限:身長×0.9(171.5cmで1560mm)
使いやすいカウンター高さ:身長×0.4(171.5cmで約69cm)
この「身長×0.4〜0.9」のゾーンをゴールデンゾーンと呼び、日々使うモノをここに配置すると、立ったりしゃがんだりの負担を軽減できます。
椅子の座面:身長×0.23(171.5cm → 約39.5cm)
テーブルの高さ:身長×0.41(171.5cm → 約70.3cm)
テーブルと座面の間(差尺):身長×0.17程度(26〜29cm)
ペンダントライトの高さも、テーブル天板の高さの2倍(例:テーブル700mm → ライト高さ1400mm)に設定することで、重心が下がり、くつろぎ感が生まれます。
玄関の土間収納は、高さ・奥行きともに家族のライフスタイルにあわせて設計。長尺物も収納しやすくしています。
**ハイドア(3枚引戸)**で、天井高を活かした空間の抜けを演出。アクリル戸からはやさしく光を通します。
ストリップ階段は吹き抜けの抜けと相まって、視覚的な軽やかさと圧迫感のなさを実現。
脱衣室の造作カウンターは、使いやすい高さに。天井から吊ったランドリーパイプは洗濯導線に配慮した位置に。
洗面台は「身長×0.45」の基準をベースに設計し、毎日の使いやすさに配慮。
空間の広がりやデザインだけでなく、暮らしの快適さを支える“高さ”の設計は、数値的根拠に基づくことが重要です。
同じ素材、同じ間取りでも、「高さ」の微調整によって暮らし心地はまったく異なってきます。
お引渡しの際はまだ家具のない空間ですが、これからE様ご家族の暮らしが加わることで、唯一無二の住まいに育っていくのを、私たちもとても楽しみにしています。
一般的には【身長×0.55】が目安です。
たとえば身長171.5cmの方なら約93.4cmが適切とされます。
この高さは、人の重心に合った高さのため、作業中に身体がブレにくく、疲れにくい設計になります。
近年のキッチンは850〜900mmが主流ですが、腰痛対策や作業効率を考慮して個別に調整することが理想です。
棚の上限目安は【身長×1.17】。171.5cmの方なら2006mm(約2m)が限界です。
引き出しの限界高さは【身長×0.9】で、171.5cmの場合は1560mm。これ以上だと中身が見えにくくなり、出し入れもしづらいです。
一番使いやすい「ゴールデンゾーン」は、【身長×0.4〜0.9】の範囲内。この高さ帯に、毎日使うものを集約すると暮らしやすくなります。
洗面ボウルの高さは【身長×0.45】が基本です。
男性(身長171.5cm)なら約77cm、女性(160cm)なら約72cmが使いやすいとされています。
洗面台は「水ハネのしにくさ」や「前かがみになりすぎない」こともポイント。顔を洗う・歯を磨く動作を想像して設計することが重要です。
座面:身長×0.23(171.5cmなら約395mm)
テーブル天板:身長×0.41(171.5cmなら約703mm)
**差尺(座面とテーブル天板の間)**は26〜29cmが最も快適。
差尺が狭いと太ももがテーブル下に当たり、広すぎると食事や作業がしづらくなります。
🪑 ちなみに、座高に合わせた差尺の理論から、一番背の高い人に合わせてテーブルを選ぶのがベストという考え方があります。
基本は、テーブル高さの約2倍を目安にします。
たとえば、テーブルが700mmの場合、ライトの中心は床から1400mmが理想です。
光の重心が下がることで、包まれるようなあたたかさや視覚的な落ち着きが生まれます。
💡 補足:トイレの照明など、座って使う場所では同様に床から1400mmの高さに設定すると、空間に面白みが出ます。
長いコートなどを掛ける場合は【身長×1.03】が基準です。171.5cmの方なら約1765mm。
低身長の方にとっては高すぎることもあるため、使う人に合わせて高さを変えるのがポイント。
夫婦で身長差がある場合、奥様が使いやすい高さに設定し、旦那様には少し屈んでもらう、という配慮も設計思想のひとつです。
一般的なダウンライトは極力控え、壁面にブラケット照明を設けることが多いです。
壁ブラケットの高さは【床から1850mm】を基準に。視線の高さや空間の重心を整える意味があります。
また、天井面をすっきり保つことで、空間全体が広く、美しく見える効果もあります。
はい。同じ素材、同じ図面でも「高さ」の設計が違えば住み心地が大きく変わります。
たとえば、扉をハイドアにするだけで視線が伸び、空間が広く感じられます。
また、カウンターや棚の高さひとつで、毎日の動作が「快」になるか「負担」になるかが決まります。
高さの設計は、間取りや素材と同じくらい暮らしに影響します。
「デザイン」や「機能性」だけでなく、「体に合っているかどうか」が、心地よい暮らしをつくる土台になるからです。
特に注文住宅の場合は、一人ひとりの暮らし方や身体にフィットした高さ設計が可能です。ぜひ設計士と一緒に検討してみてください。
これからも、住まいの快適さを感覚ではなく設計で生み出すことを大切にしながら、皆様のお家づくりをサポートしてまいります。
「高さのこと、もっと詳しく知りたい」という方は、ぜひお気軽に設計士までお声かけください。
私たち長崎材木店一級建築士事務所は、“より美しく、すみ継ぐ”という思想のもと、福岡で自然素材の注文住宅を、設計から施工まで一貫して手がけています。ただ家を建てるのではなく、暮らしをかたちにすることを何より大切にしています。「福岡で家を建てるなら、長崎材木店 一級建築士事務所」──そう言っていただけるように。