── プライバシーとデザインを両立する、窓の設計思想と実例
こんにちは、設計士です。
「新しい家では、できるだけカーテンを減らしたい」
「そもそもカーテンがいらない設計ってできないの?」
そんな声を、最近の打ち合わせでよく耳にします。
たしかにカーテンは、視線を遮ったり遮光したりと、住宅において“なくてはならない存在”として扱われてきました。
しかし今、「カーテンが前提でない設計」が見直されています。
それは単なる“省略”ではなく、“建築としての窓のあり方”を問い直す設計行為です。
今回は、「カーテンのいらない窓」をテーマに、その実現方法と注意点、具体事例まで詳しく解説していきます。
現代の暮らしでは、以下のような理由からカーテンレスの暮らしを望む人が増えています。
布のひらひらが空間のノイズに感じる(特にミニマル志向の方)
掃除やメンテナンスが面倒
夜に閉める・朝に開けるという動作の煩わしさ
せっかくの美しい窓のデザインが隠れてしまう
日中は閉めていても開けていても、なんとなく落ち着かない
それらを解決するのが、**“カーテン前提ではない窓の設計”**です。
👉 目線の高さからズラす、見下ろされない、通りから隠す
高窓(ハイサイドライト)にする
採光は天井際、視線は壁で遮る
通りに面していても「45度」角度を振ると、視線が入りにくい
👉 外とつながる空間こそ、“外で遮る”発想へ
デッキや庭との間に高さ1.2~1.5mの木塀
常緑樹・落葉樹を組み合わせて、季節ごとに透け方を調整
隣家の窓と「ずらして配置」することで視線を抜ける
👉 窓の「向き」「大きさ」「ガラス仕様」でカバーする
東側:柔らかい朝日をハイサイドで取り込む
南側:深い庇で直射をコントロール
西側:そもそも“抜かない”か、細いスリット窓で対応
北側:採光・通風の優等生。カーテン不要窓のベストポジション
天井際に横長の窓を設置(床から2000mm以上)
外からは見えず、朝の光だけやさしく差し込む
カーテン不要で、寝室でも自然な目覚めを実現
外構計画で視線をカット
室内はあえてカーテンもブラインドもなし
室内の動きが外から見えず、夜でも安心
明るさは十分、外からは“見えないが光は入る”設計
水回りでも布を使わず、清潔感のある空間に
通りや隣家の視線を完全に避けつつ、
「天空から光が降りてくる」ような空間演出
→ LDKや寝室は“灯りがついた夜”の視線を最重要視します。
外構+角度+ガラスの選定(乳白・型板など)で対策。
→ 高性能トリプルガラス/Low-E複層ガラスで十分対応可能。
むしろ「布1枚より、ガラス選定の方が効果的」な場合も。
→ はい。**「カーテンレス設計=外構を前提とした建築」**です。
植栽・塀・ウッドフェンス・デッキなどとセットで計画します。
向いている窓 | 理由 |
---|---|
ハイサイドライト | 視線に入らず、光と風だけを取り込める |
掃き出し+外構で囲む | 外構で視線を切れば、開放感とプライバシーを両立 |
FIX窓 | 視線も換気も必要ない場合は演出に最適 |
北側の採光窓 | 光は取り入れ、外の視線はほとんど気にしなくてOK |
向いていない窓 | 対応策 |
---|---|
通りに面した腰高窓 | 目隠しガラス+植栽 or そもそも窓をやめる |
隣家と近接する窓 | 型ガラス+FIX or 掃き出しでなくスリットで調整 |
Q:カーテンなしで本当に外から見えませんか?
A:設計次第で十分可能です。視線の高さ・角度・外構・ガラスの選定を複合的に設計すれば、日中も夜間も快適に暮らせます。
Q:光がまぶしすぎたり暑くなったりしませんか?
A:南や西面は庇で直射をカット。高性能ガラスの遮熱性能を活用し、“設計段階で陽射しを操作”するのが鉄則です。
Q:寝室にカーテンがないと朝早く起きてしまいませんか?
A:それを逆に利用して、自然光で目覚める“光の目覚まし”設計が可能です。もちろん遮光したい場合は、必要最小限のロールスクリーンなどで補完できます。
Q:冬寒くありませんか?
A:**サッシの断熱性能・ガラスの性能がポイントです。**今の高性能住宅では、窓の性能をしっかり設計すれば問題ありません。
Q:来客時に丸見えにならないようにしたいのですが…
A:リビングなど人目が気になる場所には、レイアウト・家具配置・動線設計・外構計画を総合的に組み合わせて「抜け感」と「隠す」を両立させます。
「窓=カーテンありき」という固定観念を一度手放すと、
光・風・景色・気配の取り込み方がまったく変わります。
カーテンがないことで、素材感と窓のデザインが際立つ
光を遮らずに暮らすことで、朝夕のリズムが自然になる
プライバシーは「隠す」ではなく、「見えないように設計する」
“閉じるための布”をやめて、
“開いていても落ち着く窓”をつくる。
これが、カーテンレス設計の本質です。
私たち長崎材木店一級建築士事務所は、“より美しく、すみ継ぐ”という思想のもと、福岡で自然素材の注文住宅を、設計から施工まで一貫して手がけています。ただ家を建てるのではなく、暮らしをかたちにすることを何より大切にしています。「福岡で家を建てるなら、長崎材木店 一級建築士事務所」──そう言っていただけるように。