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住宅設計という仕事をしていると、お客様からこんなご要望をいただくことがある。
「リビングはもう少し広くしたい。」
「キッチンはこの家のようにしたい。」
「収納を増やして、和室も欲しい。」
「この家の玄関が素敵だったので取り入れたい。」
その気持ちはよく分かる。実際、私たちも一つのプランにたどり着くまで、エスキースの段階では何案も描き、試行錯誤を繰り返している。
しかし、家づくりは「良いところ」を集めれば完成するものではない。
一つひとつの要望は魅力的でも、それを積み重ねていくうちに、建築全体のバランスは少しずつ崩れていく。性能や構造、外観との整合性が失われ、結果として、まるで部品だけを寄せ集めた改造車のような家になってしまうことがある。
紙の上では、どれも収まりそうに見える。
しかし、家は平面では建たない。
私は設計を、よくルービックキューブに例える。
一面だけを揃えようとすると、別の面が崩れる。
収納を優先すれば構造に無理が生じることがある。
窓を増やせば耐震性や断熱性能とのバランスを考えなければならない。
開放感を求めれば、視線や日射への配慮が必要になる。
予算が変われば、計画全体を見直さなければならない。
建築とは、そのような世界である。
だから私は、家づくりを平面ジグソーパズルではなく、六面で考えるルービックキューブだと考えている。
家は三次元の立体である。
一つの面だけを見ていては完成しない。
六つの面を同時に整えながら、一つの建築として組み上げていく仕事なのである。
その六面とは、
この六つは、すべて深くつながっている。
どれか一つだけを優先すれば、必ず別のどこかに歪みが生まれる。
だから設計者は、お客様の要望をそのまま図面に描く人ではない。
六面すべてを見渡しながら、その土地、そのご家族にとって最も整合性の取れた答えを導き出す仕事なのである。
そのために私は、まず土地を歩く。
朝の光を見る。
風の流れを感じる。
道路から建物がどう見えるかを確かめる。
隣家の窓の位置を眺める。
法規を調べ、敷地の可能性と制約を読み解く。
土地は何も語らない。
しかし、丁寧に向き合えば、多くのことを教えてくれる。
その声を聞かずに間取りだけを考えれば、出来上がるのは「家」ではなく、ただの「プラン」である。
街を歩いていると、どこか違和感のある建物に出会うことがある。
性能は悪くない。
使い勝手にも大きな問題はない。
それでも、なぜか美しく感じない。
その理由は、一つの面だけを揃えようとして、全体の調和を失ってしまったからではないだろうか。
家は、建主だけのものではない。
何十年もの間、その土地に建ち続け、街の景色となり、次の世代へ受け継がれていく存在である。
だから設計とは、一棟の建物をつくる仕事ではない。
その土地にふさわしい景色をつくる仕事である。
家づくりは、平面ジグソーパズルではない。
六面を同時に考えるルービックキューブである。
その難しさこそが設計の本質であり、その奥深さこそが、この仕事の面白さなのだと私は思う。
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