比較は、楽しい。
比較は、楽しい。
今、お香にハマっている。
伽羅、沈香、乳香、白檀。
それぞれに、まったく違う顔がある。
比べてみると、その違いが静かに立ち上がってくる。
久留米の老舗『天年堂』を訪ねた。
棚一面に並ぶお香。
もともと八女の杉で線香を作っていたという。
四百年近く続く仕事には、理由がある。
香りには、天然のものと人工のものがある。
焚いてみると、すぐにわかる。
嫌味がない。角がない。
ただ、そこに在る。
お香は、見てもわからない。
焚いて、嗅いで、初めてわかる。
いくつか持ち帰り、試した。
「松林」
沈香の渋みに、漢薬の辛み。すっと引く。
「空海」
同じ沈香でも、わずかに華やぐ。
「白檀鴻臚館」
やわらかく、ふくよかな香り。
「乳香」
苦味の奥に、かすかな甘み。
比べていくうちに、好みが見えてくる。
結局、私は「松林」だった。
余計なことを語らない。
静かで、芯がある。
香を比べながら、思った。
一つだけでは、わからない。
並べてみて、初めて見えてくるものがある。
だが——
派手なものほど、すぐにわかる。
そして、すぐに飽きる。
静かなものは、わかりにくい。
だが、残る。
家も、同じ。
比べるとは、選ぶことではない。
見抜くことが肝要。
残るものは、いつも、静かである。

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