本当の「値」
ガンジス川を訪ねた後、今度は夜行バスで山道をこえネパールへ移動することとなる。
地繋がりのせいか、入国も入国審査もおおらかなものである。
まるで遊園地に入る様な感じと言ったら言い過ぎであろう。
ネパールの首都カトマンズで、土産物や骨董品を物色することになった。
店先に並ぶ品々を手に取り、「これは」と思うものの値段を尋ね、交渉をする。
そこには、値札が付いていないものがほとんどだった。
いや、正確に言えば、値札も、決まった価格も存在していない。
骨董品はなおさらだ。
同じ品物は一つとしてなく、比較のしようがない。
言葉も十分には通じない。
身振りや表情、間の取り方だけで、やり取りが進んでいく。
そのやり取りの中で、ふと考えた。
この場で、いったい何が価格を決めているのだろうか、と。
相場でもない。
スペックでもない。
理屈でもない。
答えは、意外なほどシンプルだった。
「売り手と買い手の情熱」が、価値を決める。
価格とは、本来そういうものなのかもしれない。
比較が消えた場所で、情熱と情熱が向き合い、静かに合意した点。
そこにだけ、本当の「値」が生まれる。

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