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侘び寂び

侘び寂び

今日は十二月三十日。

年の終わりに、実家の玄関まわりを整える。
この家は、ゆうに百年を超える。
柱も敷居も、すべて時間の名残。
だが、古いだけでは足りない。
静かに、掃き、拭き、清めていく。
玄関のタイルを水とデッキブラシで洗い流し、硬く絞った雑巾で床を丹念に拭き上げる。



侘び寂びとは、古いものを愛でることではない。

ただ年月を重ねただけのものが、侘び寂びになるわけではない。
そこには必ず、
掃き清められる時間がある。
土間を掃く。
庭の落ち葉を集める。
木の床を拭き、道具を手入れする。
人の手が入り、
日々の暮らしの中で、静かに整えられてきた痕跡。


それが積み重なった先に、
ようやく佇まいが生まれる。

放置された古さは、ただの荒れでしかない。

埃をかぶり、傷んだままのものは、
侘び寂びではなく、無関心の結果。
長い時間をかけて、
慈しみ、掃き清められ、
使われ、手入れされ続けたものだけが、
余計なものを削ぎ落とし、静かな美しさに辿り着く。

侘び寂びとは、完成形ではない。
日々の行為そのもの。
掃くこと。
整えること。
手を入れ続けること。
その繰り返しが、
ものを古びさせるのではなく、
深めていく。
そしてある日、主張はないのに、なぜかその場の空気が澄む。

その気配こそが、掃き清められてきた時間の行き着く先であり、
私はそれを、侘び寂びと呼ぶのだと思う。

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