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創業者の想い

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テクノロジーだけでは、美しさは生まれない。

私は、深い軒のある家が好きだ。

ただの好みではない。
そこに「理由」があるからだ。

いまの住宅は、どんどん軽く、フラットになっている。
軒をなくし、陰影を消し、窓をなくし、壁を際立たせ箱のような形に整える。
軽やかで、都会的で、何となく写真にも映える。

ある意味、合理的かもしれない。
材料も減るし、コストも下がる。
テクノロジーが進化して、エアコン技術や防水性能、断熱性能で解決できる。
だから、昔ほど軒や窓に頼らなくても家は成立する。

合理化できる。
削れる。
なくすこともできる。

でも、私は思う。

それは「合理的」になっただけで、
本当に「美しく」なったのだろうか、と。

昔の家は違った。

雨から壁を守るために、軒を深く出した。
夏の日差しを遮るために、庇を伸ばした。
風を通すために、窓の位置を考え抜いた。
陽の光をやわらかく取り込むために、開口を整えた。
そして、周囲の山や田畑、隣家の屋根の高さに合わせ、
自然と背の低いプロポーションに落ち着いていった。

つまり、すべてが「暮らすための工夫」だった。

結果として、

深い軒が生まれ、
風が抜け、
陽の光がやさしく回り、
景観にすっと馴染む低い佇まいができあがった。

誰かがデザインしたわけじゃない。
守ろうとしただけだ。
快適にしようとしただけだ。

その必然が、そのまま形になった。

だから、強い。
だから、飽きない。
そして、静かに美しい。

深い軒の下に立つと、空気が変わる。
夏はひんやりと涼しく、雨の日も濡れずに窓を開けられる。
風がすっと通り抜け、光がやわらかく床に落ちる。

そこには、無理がない。

テクノロジーというのは便利にはなるけど、
美しくなるかと言ったらそうではないと私は思う。

むしろ、

制約と格闘した跡、
自然と折り合いをつけた工夫、
「こうするしかなかった」という必然。

そこにこそ、形の説得力が宿る。

本当のデザインとは、
足したものではなく、削れなかった理由の集積だ。

深い軒も、
風の抜けも、
陽の光も、
低いプロポーションも、

すべて訳があり、文脈があり、同時に風景でもある。

私は、
派手な造形より、
静かにそこに佇む家がいい。

目立たないのに、なぜか記憶に残る家。
時間とともに、土地に溶け込んでいく家。

家は、映えを狙って見せるものじゃない。
自然と共に生きるための器だ。

軒の深さは、
その家がどれだけ本気で暮らしを守ろうとしているかの、
静かな覚悟の表れなのだと思っている。

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