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カトマンズの犬

カトマンズの犬

ネパールの首都
カトマンズの繁華街を歩いていたとき、ふと一匹の犬に目を奪われた。
正確に言えば、生きた犬ではなく、店先に無造作に置かれていた木彫りの犬の置き物だった。

繁華街には、土産物屋がひしめいている。仏像、布製品、金属細工――どれも観光客向けの品が並ぶ中で、
その犬だけは明らかに異質だった。
まるで小学生が図工の時間に作ったかのような、手彫りの跡がそのまま残る下手ウマな造形。
左右非対称で、洗練とは程遠い。それなのに、なぜか視線が離れなかった。

気づけば、その犬を手に取り、店の中へ入っていた。
値段を尋ねると、店主は当然のように言った。

「15000ルピー」1ルピーは日本円の1円なので1万5千円である。

一瞬、耳を疑った。
当時の感覚では、ネパールの物価は日本の三分の一ほど。
単純計算でも、日本円で4万5千円ほどの感覚になる。自分の想定とは、あまりにもかけ離れていた。

店主は「アンティークだから価値がある」と言う。
ぼったくりなのか、本当に価値があるのか。判断がつかない。
夕方にもう一度来て、交渉しよう。そう思い、その場では何も決めずに店を出た。

しかし、夕方になって再びその場所を訪れたとき、店は見つからなかった。
通りを何度も往復し、似たような土産物屋を片端から覗いたが、あの店も、あの犬も、どこにもない。
翌朝も探してみるが
記憶違いだったのかと思うほど、跡形もなく消えていた。

結局、そのままカトマンズを離れることになった。
後ろ髪を引かれる、とはまさにこのことだ。

今でも、あの犬のことはふと脳裏に浮かぶ。
もしかすると、あれは幻だったのかもしれない。
けれど、確かに手に取った感触と、値段を聞いたときの戸惑いだけは、今もはっきり覚えている。

人生においては、特に旅先では、「あとで決めればいい」「また来ればいい」は愚策である。
一期一会とは、こういうことなのだろう。
その瞬間に決断しなければ、二度と巡り合えないものがある。

カトマンズの犬は、何も語らずに、それだけを教えてくれた気がしている。

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