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創業者の想い

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いい家は、五感を刺激する。

いい家は、五感を刺激する。

最近の家は、やけに整っている。
線はまっすぐで、角は鋭く、無駄は削ぎ落とされている。
写真に収めれば、確かに美しい。

だが、あまり心が動かない。

理由は単純だ。
見栄えを優先してつくられているからである。

家は、見るためのものではない。
五感で受け取るものである。

触覚

木の手すりは、十年かけて艶を帯びる。
触れた人の人生が、そこに重なっていく。

無垢の床は、足裏で季節を語る。
冬はきゅっと締まり、夏はさらりとほどける。
それは温度の話ではない。
足裏に返る弾力、わずかな感覚。
触れた瞬間、その日の空気まで伝わってくる。

均一な素材は、いつまでも均一のままだ。
だが本物は、住む人に染まっていく。

それが、家に時間が宿るということだ。

嗅覚

いい家に入ると、人は無意識に深呼吸をする。

木の香り。
塗り壁のほのかな匂い。
澄んだ、沈黙に近い空気。

空気は目に見えない。
だが、体は嘘をつかない。

呼吸が深くなる家は、正しい。

聴覚

塗り壁は、暮らしの音を優しく受け止める。
強く跳ね返すことなく、やわらかく抱きとめる。
音は角を失い、余韻となって広がる。

静けさとは、ただ音がない状態ではない。
風の気配、衣擦れのかすかな音、遠くの生活のリズム――
それらが互いにぶつからず、穏やかに調和していること。

塗り壁の空間は、その調和をそっと支えている。

視覚

本物の木や塗り壁には、わずかな凹凸がある。
光を鋭く反射せず、鈍くやわらかく受けとめる。

深い軒が落とす影は、空間に静かな奥行きを与える。
朝の光が軒をくぐり、床にやわらかく落ちる。

陰影のない家は若い。
陰影をまとう家は、歳月とともに美しくなる。

五年、十年と時を重ねるほどに、色は深まり、味わいは増していく。
光と影、そして経年変化。
それが家を、静かに育てていく。

味覚

建築と無関係に思えるかもしれない。
だが、そうではない。

食卓に落ちる光。
照明と食卓の関係。
家族の距離。

同じ料理でも、空間が変われば味は変わる。
陰影は、味を立体にする。
いい家は、暮らしの味覚をも変える。

いまの時代、家の性能は数字で語られる。
断熱等級。
気密値。
設備の機能。

もちろん大切だ。
だが数字は、記憶には残らない。

テクノロジーは便利にする。
しかし、それだけで美しくなるわけではない。

美しさとは、五感に残る記憶である。

十年後。
二十年後。

ふと柱に触れたとき、
静かにこう思えるか。
「いい家だなー」と

家は、ただ建てるものではない。
五感で感じ、時間とともに深まっていくものだ。

派手でなくていい。
強く主張しなくていい。

静かに、しかし確かに。
家には力がある。

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