「設計デザインに関する考察」
「設計デザインに関する考察」
2025 11 7 長崎秀人
設計とは、単に図面を引く作業でも、見栄えを整える技術でもない。設計とは問題を解決する力であり、人のために考え、人の想いを形にする行為。そこには必ず「気遣い」という姿勢が求められる。気遣いができない人に設計はできない。建物でも、製品でも、空間でも、そこに関わる人の気持ちを想像し、その人が何を求め、何に困り、どんな瞬間に心が動くのかを感じ取る必要がある。
「この人はこうしたいのだろうな」「こうしてあげたほうがいいかな」と相手の立場で考える感覚、それこそが設計の出発点。与えられた要望をそのまま形にするだけではなく、その奥に潜む意図や本当の願いを読み取る。つまり、言葉にされない“気配”を察する心。それを感じ取る力があるほど、設計は深みを増し、人の心に響くものとなる。
また、デザインとは、単に体裁を整えることではなく、課題をより良くする行為である。今ある状態を少しでも快適に、美しく、意味のあるものへと変えていく。その過程には多くのやり取りがあり、思いやりや想像力が求められる。良いデザインは人を笑顔にし、空間に穏やかさをもたらし、使う人の心まで変える力を持っている。
だからこそ、設計もデザインも人を中心に考えるべき仕事である。数字や見栄えを整える前に、人の温度を感じ取り、その心の奥にある動機を理解することから始める。それが、本当の意味での“設計する”ということなのだと思う。設計とは技術だけでなく、人としての感受性を磨く営みなのである。技術や知識だけに依存するものではなく、人の気持ちを読み取る感受性、気配り、そしてより良い社会を追求する創造性が基本となる。

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