「第三の皮膚」としての住まい
「第三の皮膚」としての住まい
オーストリアの建築家フンデルト・ヴァッサーが「住宅は第三の皮膚である」と述べている。第一の皮膚=身体、第二の皮膚=衣服、第三の皮膚=住宅 、ここでの住宅は、気候から身体を守る環境調整装置であると同時に、個人や家族のアイデンティティ・ライフスタイルを表現するシンボルとしての「表皮」として論じられている。
住宅とは人間を包み込む表皮である。そこで3人の服飾創業者の言葉を引用してみる。
イヴォン・シュイナード(パタゴニア創業者)「私にとってベストな衣料とは、長持ちでき、機能的で愛情を注げる衣料です。衣服を消費する上でもっとも環境に対し責任ある行動とは、第一に古着を購入する事、第二に出来るだけ質の高い商品を購入する事です。」
住宅に置き換えるなら住み継いでいくことを前提にした家。過剰な設備より、壊れにくく直しやすい構造・一時の流行より、暮らしの中で磨かれていく素材・スクラップ&ビルドではなく、手を入れながら使い続ける前提これはそのまま「一番サステナブルな家は、建て替えずに住み続けられる家」という意味になるかもしれない。
ラルフ・ローレン「アンファッショナブル・ファッションというのは、タイムレスでクラシックという意味で、トレンドを追いかけたり、最新のファッションばかり身に付けたりしないことだ。最新のトレンドでないから、後々まで残る。」
住宅でいえば、“いま流行っている家”ではなく、“いつ見ても違和感のない家”。・流行の外観デザイン・その時代だけのディテール・SNS映えを優先した設備や間取りこうしたものは、5年、10年で必ず古く見える。一方で、・プロポーション・素材の質・光と影の扱い・余白の取り方こうした要素は、流行にならない。だから古びない。ラルフ・ローレンが言う「アンファッショナブル=流行で流されない」これは家でも完全に成立する。
石津謙介(VANジャケット創業者)「“量”ではなく“質”にこだわり、それを大切にしながら賢く使い回す時代である。着る物だけでなく、“質”にこだわるライフスタイルこそ、カッコ良いと言えるのかもしれない。」この考え方が一番、日本人との相性が良い。
広さや部屋数で誇らない・設備の豪華さで競わないその代わりに、・素材の確かさ・構造の正直さ・手入れを前提にした設計**「質を理解し、使いこなす暮らし」**こそが、本当に“長く残るいい家”になる。
「三者の思想を束ね、『第三の皮膚』としての住宅の設計思想へと置き換えると──」
長く使える・直しながら付き合える・時間が味方になる・流行に左右されない・住む人の手が入る余地があるこれはつまり、家を「消費財」にしない という覚悟。我々の家づくりに引き寄せるなら、こう言い切っていい「良い家とは、完成した瞬間がピークではない。住み続けることで、価値が立ち上がってくる家である。」
パタゴニアが服でやってきたこと、ラルフ・ローレンがスタイルで守ってきたこと、VANが日本人の生き方に示したこと。住宅という最も長く付き合う“道具”にもしっかり当てはまる。これは、思想であると同時に、選択の問題かもしれない。大量に作らない。流行らせない。だが、長く残る。この姿勢そのものが、「我々の在るべき家づくり」だと、確信したい。

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