エイジングウッド
「OBIエイジングウッド」について
この度、長崎材木店は木の外壁を新しく標準仕様として組み込むことになった。
材木店という名前からして必然のことである。
――木の外壁と、時間の物語――
木の外壁には、不思議な魅力がある。
家に寄り添いながら、風にも雨にも抗うのではなく、ただ静かに受け止めていく。
人の暮らしと同じように傷もつくし、色も変わる。それでも、そこに佇む姿はどこか凛としている。
外壁に木を選ぶということは、効率や均質性を追う現代の家づくりと、少し距離を置くということだ。
大工職人が一枚一枚貼って行くので手間も時間もかかる。
更に木は色を変えていく。
茶色の木材色は切ったばかりの一瞬の姿にすぎず、
自然界の木々を見渡せば分かるように、樹木の色調はシルバーグレーである。
雨に打たれ、日差しを浴び、タンニンが抜けていくにつれ、表情は落ち着いた灰色へと向かう。
それは劣化ではない。
むしろ、木が周囲の景色に溶け込んでいく“エイジング”ともいえる変化である。
我々の家では、90センチ以上軒をしっかり深く出す。
雨かかりは少なくなるが、それでも時間が描く細やかな変化は確実に訪れる。
その様子を眺めていると、家というものが、人の暮らしと同じように年を重ねていくのだと気づく。
塗装を施すという選択肢もある。
しかし、最初から色を乗せると木の本来の自然の表情が消えてしまう。
少しもったいないことであると考える。
塗るなら十数年後、その家が紡いできた時間を見てからでいい。
塗装も、使うならライトグレーやダークブラウン、ブラックが良い。
できる限り木の陰影を殺さず、風合いを引きだす。
木の外壁の魅力は、維持管理の合理性にもある。
そもそも塗装の厚みは0.06〜0.1mmである。1ミリにも満たない。反対に木の板の厚みは15ミリ以上である。
10年に一度の塗装の塗り替えなどが必要ない分、ランニングコストは格段に低い。
またサイディングのように“交換”が難しい素材と違い、木はどこか傷んでも、その部分だけを取り替えられる。
さらにステンレス製のスクリュー釘を使えば、釘抜けにも強く、百年単位で家を守れる構造になる。
思えば木の外壁とは、住まい手の人生と同じように“変化を楽しむ素材”かもしれない。
色が褪せても、雨染みが少し残っても、そこに暮らしの時間が刻まれる。
その変化は人工的な退色ではなく、自然が描いた唯一無二の風景だ。
長崎材木店が目指す家とは、「建てて終わり」の家ではない。
三十年程度で建て替えられる時代と異なり
百年住宅の時代、イニシャルコストよりも、長く住み継ぐためのコストの方がはるかに重い。
だからこそ、私たちはランニングコストのかからない木の外壁を推奨したい。
木は、生きている。
風にも光にも、住む人の気配にも反応しながら、少しずつ姿を変えていく。
それを受け入れられる人にとって、木の外壁はこの上もなく豊かな素材になる。
そして、この“経年変化を美しさと捉える思想”「より美しく住み継ぐ」
これこそが長崎材木店の設計思想であり、未来へつなぐ家づくりの象徴である。
時間に耐える家をつくる。 それは、家そのものが“佇まい”で語る建築である。

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