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「壊れるものと、壊れないもの」20年後の家が教えてくれたこと

築20年になろうという我が家が、静かに、しかし確かに軋み始めている。
トイレが水を溜めなくなり、風呂の給湯が突然止まり、
猛暑の中、エアコンから生暖かい風が恨めしげに流れる。

最近、こうして一つ壊れるたびに、「ああ、またか」とため息が漏れる。

家を建てた当時、選んだのは“最新”の設備だった。
ショールームを歩き、担当者の言葉に頷きながら、期待と安心を胸に抱いた機器たち。
けれど、その“最新”も、つけたその日がピークだった。

5年も経てばマイナーチェンジ。
10年経てば、もう廃盤。

先日、トイレの修理で来たメーカーの担当者に、涼しい顔でこう言われた。
「20年もったら、上等ですよ」と。
まるで、“壊れるのが当然”と言わんばかりに。

皮肉なものだ。
家を建てるときは、あれほど設備に目を凝らしていたのに。
時間の経過とともに、それらは「交換すべきもの」へと変わっていく。

だが、そのたびに思う。
本当に大切なのは、設備ではなく、設計であるということ。
風の抜ける間取り。
冬にあたたかい陽が射す窓の位置。
素材の手触り、柱の太さ。
そして、その家をどう生きるかという“思想”。

それだけは、今もなお、凛として家に息づいている。
交換できないものこそが、家の芯を成していた。

たとえば、古びたキッチンの前に立ちながら、
ふと目に入る光の角度に、思わず救われる瞬間がある。
そのとき気づくのだ。

壊れていくのは、設備だった。
けれど、時を経て深まるのは、暮らしの手触りだった。

20年という歳月が問い直してくるのは、
どんな機器をつけたかではなく、
どんな“思想”を家に宿したか――それだった。

「文・長崎秀人(長崎材木店一級建築士事務所 代表)」

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