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港の酒場にて、ひとつのGoodbye。

港の酒場にて、ひとつのGoodbye

香川県・丸亀。
正面に小さな港。周りには何もない。

その目の前に、ひっそりとネオンを灯すバーがある。

このバーの存在を知ったのは、もう10年ほど前になる。

港の風景と、黙ってたたずむ建物。
元は船舶倉庫だったのだろう。
その写真をどこかで見てからというもの、ずっと気になっていた。

行こう行こうと思いながらも、四国という地はどこか縁遠く、
ようやく、その扉を開けたのは三日前の夜だった。

カウンターの隣に「SINCE 1987」のプレート。
自分がバーに足を運び出した、ちょうどその頃の年だ。

中洲・七島、Bar Higuchi。
高知の露口(今はもうない)、
宮崎・赤煉瓦、
神保町のノンノも、静かに幕を閉じた――

名店と呼ばれるバーをいくつも歩いてきたつもりだが、
ここには、そのどれとも違う「におい」があった。

マスターは、白髪で髭をたくわえた男。
寡黙だが、酒に人生を預けてきた者の目をしていた。
グラスを磨く手つきひとつで、積み重ねた年季がにじみ出る。

三年前、気まぐれで酒をやめた。
体調を崩したわけではない。ただ、そういう潮時だった。

それ以来、バーという場所に足を運ぶことはほとんどなかった。
だが、ここだけは、どうしても来たかった。
酒を飲まなくてもいい。ただ、この空間に身を置きたかった。

バーとは、空間芸術でもある。

店の背にある波止場には、小型船が何隻か静かに停泊していた。
港町の夜に、ネオンの灯りがぼんやりと浮かんでいる。

カウンターに腰を下ろし、ウイスキーのグラスを前に、
ただ、静かに時間を過ごした。
酒を飲まなくても、雰囲気だけで酔える夜がある。

帰り際、マスターが無言で手を差し出した。
何も言わずに、その手を握り返す。

たぶん、同じ匂いを感じたのだろう。
かつて酒を愛した者同士の、無言の握手。
戦友に向けるような、静かな敬意と別れのGoodbyeだった。

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