福岡県注文住宅 | 株式会社長崎材木店一級建築士事務所 | 設計士と作る素敵な家 自由設計デザイン
「福岡注文住宅」

TEL092-942-2745

営業時間 9:00〜18:00 (水・木曜定休)

創業者の想い

CAPTAIN'S TWEET

ファスト化する建築

本物の木を忘れた時代に

先日、『ファスト化する建築』という本を読んだ。
建築エコノミスト/一級建築士でもある森山高至氏の著書である。
窓のない巨大建築の話が書かれていた。

それはある日突然現れる。
外の風景も、光も、音も遮断された空間。
そこには「効率」だけがあり、人間の時間が流れていない。
著者の言葉が妙に心に残った。

そう「イオンモール」のことである。
どの店も、まるで同じ型から抜かれたように見えるからだ。
「効率」や「短縮」という言葉のもと、
構造も素材も、できるだけ早く、できるだけ安く。
倉庫のような窓のない建築
木に似せた新建材。石に似せたフロアーシート。塗り壁に似せたビニールクロス。
そんなふうに作られた建物の中に、本物の呼吸を感じることはない。

見た目は木目調でも、触れても匂いをかいでも、そこに命のぬくもりはない。
音を吸い、湿りを調える、あの静かな力もない。
私たちはいつの間にか、“似ているもの”で満足するようになったのだろう。

かつて、建築は、木などの自然の力と時間を預かることだった。
山で育った一本の木には、四季の風が通り、
雨の重みを受け止めてきた年輪が刻まれている。
その節のひとつひとつに、自然の記憶が宿っていた。
それを見極め、刻み、組み上げる。
人と自然が対話する営みだった。

今はどうだろう。
建築材料は「素材」ではなく品番で管理された新建材という「商品名」で呼ばれ、
自然の木の個性は“誤差”として排除される。
すべてが規格で測られ、均一に整えられていく。
いつの間にか、家づくりは「製品づくり」に変わってしまった。
子供の頃から上記のような建築に慣れ親しんだ人達・・・・・
今の人は本物を知らないせいか違和感さえも感じない。

誰かが言っていた――
「大衆は常に間違う。売れているものは、まちがっているかもしれない」。

本物でないものは、やたらと喋りたがる。
派手な装いをまとい、光で自分を飾る。
だが本物の木は、黙ってそこに立っているだけで美しい。
それ以上の説明も、宣伝もいらない。

何十年も住み続けることになる建物が2,3ヶ月で家になる。
その速さに、私たちはもう疑問を持たなくなった。
今後何十年と暮らしていくことを考えるならば、
せめてもう少し、ゆっくりと向き合うべきではないか。

木を使うとは、時間を使うことだ。
それは、自然のリズムに自分を合わせるということでもある。
時間をかけてつくる家は、時間に耐える。
急いでつくった家は、急いで陳腐化する。
今時の軒なし住宅などが良い例であろう。

本物の木の家は、静かに人を育てる。
香りを放ち、手に馴染み、年を経るほどに深みを増す。
その変化を美しいと思える心が、
いつの間にか、私たちから失われつつあるのかもしれない。

だから私は、今日も木の声に耳を澄ます。
速さよりも確かさを、効率よりも美しさを信じながら。
この時代にあって、本物の木を使い続けること――
それは、静かな抵抗であり、
小さな祈りでもあるのだ。

代表のつぶやき 一覧へ