価値を伝えるということ
安くて、いいものはない。
そんなことは、誰だって本当はわかっている。

昔は違った。
情報が少なかったぶん、値段がすべてだった。
高ければ敬遠され、安ければ飛びつかれた。
それもまた、ひとつの時代だったのだろう。

けれど今は、違う。

人は、自分にとって「価値のあるもの」を探している。
何を買うかではなく、誰から買うか。
その人が、何を信じているか。
どんな思いで、その品を手がけているのか。
そういうことに、ちゃんと目を凝らしている。

だから、こちらも覚悟がいる。
ただ「良いものです」と言うだけでは、もう足りない。
その価値を、自分の言葉で、届けなければならない。

わたしたちの売り物は、設計力だ。
間取りだけではない。
暮らしの輪郭を描き、人生の温度を感じ取り、
「この家で生きていきたい」と思ってもらう力。

満足だけでは、足りない。
そこに絆がなければ、家はただの器にすぎない。

今や、ホームページひとつで、
大手も中小も関係なくなった。
ネットの海の中で、全てが同じ土俵に立たされている。

だからこそ、言葉にしなければならない。
我々は、何者か。
この仕事に、どれだけの誇りを持っているのか。

価格だけを見ている人もいるだろう。
だが、彼らはきっと、私たちのお客ではない。

我々が出会いたいのは、
「本当に良いもの」を、正当な対価で求める人だ。
そのために、今日も仕事をする。
信じた手で、家をつくる。

――それだけ。