家づくりを考える上でよく出てくる用語に「建築面積」と「延べ床面積」があります。 この2つ、似ているようでまったく違う概念です。
🔹 建築面積: 建物を真上から見たときの“屋根がかかっている部分の広さ”を指します。たとえば、1階部分の建物の外壁のライン(壁芯)で囲まれた範囲や、屋根付きのカーポートや玄関ポーチも建築面積に含まれます。さらに、住宅では「軒の出(のきので)」も1mを超える場合は建築面積に含まれるため、外観のデザインや庇の形状も影響してくるのです。 → **建蔽率(けんぺいりつ)**の計算に使われます。
🔹 延べ床面積: 延べ床面積とは、建物の各階の「室内の床面積」をすべて合計したものです。たとえば、1階が50㎡、2階が45㎡なら、延べ床面積は95㎡となります。収納スペースやクローゼット、居室、廊下など、建物内部に含まれる床はすべてカウントされます。 → **容積率(ようせきりつ)**の計算に使用され、建築確認や行政の許可申請でも重要な指標です。
📌 住宅計画における重要ポイント
📌 ポイントまとめ
福岡で住宅を新築したAさんは、入居後に近所のホームセンターで屋根付きカーポートを施工。しかし確認申請は行われず、固定資産税の調査時に建蔽率オーバーが発覚。
結果、是正指導が入り、カーポートの撤去と再申請に20万円以上の追加費用がかかる事態に。
▶ 教訓:後付けでも屋根があれば建築面積にカウント。設置前に必ず専門家に相談を。
Bさんは「深い軒がある家にしたい」と設計段階で希望し、南面の軒の出を1.2mに設定。 しかし建築面積が増えて建蔽率60%を超過することが判明。
LDKを1坪分削る再設計となり、家族の動線にも影響が出てしまった。
▶ 教訓:外観デザインも建築面積に関わる。日射遮蔽と法的制限のバランスが重要。
Q. 建築面積とは具体的に何を含みますか? A. 建物の1階部分の壁芯で囲まれた範囲に加えて、屋根付きのカーポート、玄関ポーチ、1mを超える軒の出なども含まれます。空から見たときに“屋根がある部分”が目安です。
Q. 軒の出が1m未満でも建築面積に入りますか? A. 原則として、軒の出が1m未満であれば建築面積に含まれません。1mを超えた場合のみ、超えた部分が建築面積に加算される可能性があります(自治体によって若干異なる場合あり)。
Q. 延べ床面積はベランダや小屋裏も含まれますか? A. ベランダは屋根付きで奥行が2m以内であれば除外されることが多く、小屋裏収納は天井高が1.4m以下であれば延べ床面積に算入されません。
Q. 建築面積と延べ床面積、どちらが建てられる家の大きさに影響しますか? A. 両方が影響します。建築面積は建蔽率、延べ床面積は容積率というルールに影響するため、敷地に対して“どこまで建てられるか”を決める基準になります。
Q. 軒の出を深くしたいが、建蔽率に影響しますか? A. はい、影響します。軒の出が1mを超える場合、建蔽率の対象面積が増えるため、建築面積の調整が必要になります。設計段階で必ず確認しましょう。
Q. 施工面積とは別物ですか? A. はい。施工面積は建築会社が見積もりや工事の際に使うもので、法的な指標とは異なります。施工面積にはポーチやバルコニー、外部階段、玄関庇などが含まれ、金額の根拠になる場合もあります。
Q. どこまでが延べ床面積か、自分で判断できますか? A. 判断が難しいケースも多いため、専門家や住宅会社に確認するのが確実です。とくに確認申請や容積率の上限に関わるケースでは、誤解が大きなトラブルを招きます。
詳細な情報や具体的なアドバイスについては、弊社設計士までお尋ねください。
文責・監修:長崎秀人
福岡県の注文住宅専門の設計事務所「長崎材木店一級建築士事務所」代表。
業界歴35年、建築士・宅地建物取引士資格保有。
設計から施工、不動産取引まで一貫対応する体制で、信頼性の高い住まいづくりを支え続けている。