IHクッキングヒーターとガスコンロは、エネルギー源や加熱方式、調理のしやすさ、安全性、災害時の利用可能性など、さまざまな点で異なる特徴を持っています。
まず、加熱の仕組みに関して、IHクッキングヒーターは電気を使用し、内部のコイルに電流を流すことで磁力線を発生させ、それにより鍋自体を発熱させて調理します。火を使わず、トッププレートはフラットなため、見た目がすっきりしており、掃除もしやすいのが特徴です。炎も見えない上、加熱速度が早いため慣れるのに注意を要します。
一方、ガスコンロは都市ガスやプロパンガスを燃焼させて、直接鍋やフライパンを加熱します。炎が見えることで、火力の強弱を視覚的に確認でき、調理中に鍋を持ち上げたりフライパンを振ったりといった直感的な操作が可能です。炒め物などの調理に向いています。
調理方法においても差があり、IHクッキングヒーターでは鍋底がプレートに密着していなければ加熱できず、土鍋やガラス製の鍋など、使用できる調理器具にも制限があります(IH対応品を除く)。また、火力調整は数値やランプによって確認します。
これに対し、ガスコンロは多くの調理器具に対応しており、炎の大きさを見ながら直感的に火力調整ができるため、より自由な調理スタイルが可能です。
安全性の面では、IHクッキングヒーターは火を使わないため、火災やガス漏れのリスクがなく、特に子どもや高齢者のいる家庭に向いています。ガスコンロは火を使用するため、火災や一酸化炭素中毒などのリスクがありますが、乾電池式であれば停電時でも利用できるという利点があります。IHは電気を使うため、停電時には使用できません。
また、IHクッキングヒーターに関しては、電磁波の影響についての関心もあり諸説ありますが、客観的にお伝えするならばこれは科学的に安全と評価されており、心配する必要はないとされています。IHは20~90kHz程度の中間周波磁界(電磁波)1~3μT(30cm離れた位置)を発生させますが、発生レベルは家庭用の他の電化製品(冷蔵庫や電子レンジなど)と同等で、世界保健機関(WHO)や国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)も「日常生活で遭遇するレベルの電磁波による健康被害は認められていない」と明言しています。家庭用IHが発生する電磁波は、ICNIRPの定める参考レベル(27μT)を大幅に下回っており、安全性は十分に確保されています。測定方法もIEC(国際電気標準会議)の規格に基づいており、科学的な根拠と国際的な基準に裏付けられた安全性が担保されています。ただし、医療機器(特にペースメーカ)を装着している場合は、念のため専門医に相談し、適切な距離を保つなどの配慮が推奨されます。また、現時点で長期的影響に関する科学的証拠は不十分な部分もあるため、今後の研究の継続が求められています。
【ちなみに電子レンジは家電の中でも比較的強い電磁波(マイクロ波)を発生させますが、扉部分に金属メッシュなどの遮蔽構造があり、マイクロ波が外部に漏れないよう設計されています。日本の電気用品安全法では、電子レンジの外部5cmの位置で「1mW/cm²以下」という厳しい漏洩基準が定められており、製品はこの基準を守って製造されています】
総じて、IHクッキングヒーターは日常使用において安全性が高く、健康への影響も現時点では極めて低いと評価されています。一方で、調理の自由度や災害時の使用可否といった点では、ガスコンロにも依然として優れた側面があり、用途やライフスタイルに応じた選択が重要です。
第三の選択肢として見た目はIHクッキングヒーターとほぼ変わりませんが
ラジエントヒーターというものもあります。以下に特徴を述べます。
ラジエントヒーターは、ガラスやセラミック製のトッププレート下に埋め込まれた電熱線(ニクロム線)によって加熱する、電気式の調理器具です。通電するとプレートが高温になり、その熱を鍋やフライパンに伝えて加熱する仕組みです。こちらに関しては電磁波はほとんど出ません。写真の赤く発熱しているところが熱源となります。(IHクッキングヒーターは赤く発熱しません。こちらが見た目の大きな違いです。)
鍋の材質を問わず使用可能
鉄やステンレスはもちろん、IHでは使えないアルミ、銅、土鍋、耐熱ガラス製の鍋も使えるため、調理器具の選択肢が広がります。
遠赤外線によるじっくり加熱
プレート自体が高温になるため、遠赤外線が食材の芯までじんわりと熱を届け、炙り調理や余熱を活かした煮込みにも適しています。
鍋の材質を選ばず使える自由度
遠赤外線効果で食材にじっくり火が通る
炙り料理や余熱調理が可能
IHと比べて若干、加熱スピードが遅い
使用中や使用直後のプレートが高温で、やけどのリスクがある
周囲の空気も温めるため、特に夏場は暑く感じやすい
特徴 | ラジエントヒーター | IHクッキングヒーター |
---|---|---|
加熱方式 | 電熱線でプレート加熱 | 電磁誘導で鍋を直接加熱 |
鍋の対応 | ほぼすべての材質対応 | 磁性のある鍋のみ対応 |
加熱速度・効率 | 遅く、効率は低め | 速く、効率は高い |
余熱の活用 | しやすい | しにくい |
炙り・遠赤外線調理 | 可能 | 不可 |
やけどリスク | 高い | 低い |
器具価格 | 割高 | 普通 |
IHに対応していない土鍋や耐熱ガラス鍋などを愛用している方
遠赤外線による炙りや余熱を活かした調理を楽しみたい方
使用後もプレートは高温状態が続くため、掃除や片付けは十分に冷めてから行う
高出力での長時間調理は電気代が高くなる傾向がある
ラジエントヒーターは、IHに比べて効率や安全面ではやや劣るものの、「鍋の自由度」や「調理の幅広さ」といった独自の強みを持ちます。IHクッキングヒーターでは対応できない調理スタイルを補完する存在として、現代のキッチンでも価値ある選択肢のひとつです。
以下はラジエントヒーターに関する個人的感想となります、あしからず。
何より遠赤外線効果で料理がおいしくできます。質量が備長炭の約3倍ともいわれる遠赤外線は、素材の表面だけでなく、奥深く浸透する特殊な性質を持っているので、放射を吸収した素材内部からも加熱されます。このため加熱効率がよく、色、香り、風味が損なわれにくく、遠赤外線は、その他の熱源に比べて炭火料理のように素材のうま味を引き出しコクを出し、料理がより一層おいしくなります。また鍋の種類を問わず、余熱料理ができるのも特徴です。
過去記事ですがよかったらこちらも 2025年版「オール電化 vs ガス」どちらが良いか?