
福岡で注文住宅を建てる。下水が来ていない地域には要チェックの浄化槽【耐用年数や設置費用まで解説】
1. 浄化槽の必要性
建築予定地が**「下水道処理区域外」**の場合、浄化槽の設置が義務付けられます。下水道が整備されていない地域では、生活排水を適切に処理するために浄化槽が必要となり、設置や維持管理の費用が発生します。
福岡県の下水道普及率は83.7%(令和3年度末時点)で、都市部を中心に下水道設備が整っています。しかし、市街地だからといって必ずしも下水道に接続できるとは限らず、以下のようなケースでは浄化槽の設置が必要になります。
- 敷地が下水道処理区域外である場合
- 下水道の整備が遅れているエリアである場合
- 敷地内に下水管を引き込めない場合
そのため、建築を計画する際には、まず建築予定地の下水道設備状況を確認し、浄化槽が必要かどうかを事前に把握しておくことが重要です。
2. 浄化槽の種類
浄化槽には大きく分けて**「単独処理浄化槽」と「合併処理浄化槽」**の2種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
単独処理浄化槽(現在は新設禁止)
- 処理対象:トイレの排水のみを処理
- キッチンや浴室の排水:そのまま排水路や川に流す
- 新規設置の可否:平成13年の浄化槽法改正により、新設は原則禁止
- 現存する割合:全国の浄化槽の約65%が単独処理浄化槽(過去に設置されたもの)
合併処理浄化槽(現在の主流)
- 処理対象:トイレ・キッチン・浴室など、家庭内のすべての排水
- 環境負荷:単独処理浄化槽よりも環境への影響が少ない
- 新設可能:現在の新設は原則として合併処理浄化槽のみ
- 助成制度:多くの自治体で補助金制度がある
福岡県内では、8割以上の自治体が合併処理浄化槽の助成制度を用意しており、環境保全の観点からも合併処理浄化槽への置き換えが推奨されています。
3. 浄化槽の耐用年数
浄化槽の耐用年数は、メンテナンスの有無や使用状況によって異なります。
- 適切な維持管理なし:約30年
- 適切な維持管理を実施:約50年
古い浄化槽を再利用することも可能ですが、以下の点に注意が必要です。
- 現在の法律に適合しているか
- 家族の人数に適したサイズか
- 老朽化による不具合のリスク
基本的には、新しいものに交換することが推奨されます。
4. 浄化槽の適正サイズ(建築面積による区分)
浄化槽のサイズは、家庭の延床面積や世帯人数に応じて決められています。
延床面積 |
浄化槽のサイズ |
130㎡未満 |
5人槽 |
130㎡以上160㎡以下 |
7人槽 |
160㎡超 |
10人槽(※二世帯住宅など) |
特に二世帯住宅など、キッチンや浴室が2か所以上ある場合は10人槽が必要となるため、事前に建築会社と相談して適切なサイズを選ぶことが重要です。
5. 合併処理浄化槽の設置費用
設置費用の目安
助成金制度(福岡市の場合)
福岡市では、合併処理浄化槽の設置に助成金が適用されます。
浄化槽サイズ |
助成額(最大) |
5人槽 |
332,000円 |
7人槽 |
414,000円 |
10人槽 |
548,000円 |
助成金を活用することで、設置費用の4割程度を負担してもらえるため、事前に自治体へ相談し、申請手続きを行うことが推奨されます。
6. 設置・使用時の注意点
1. 行政への届け出が必要
浄化槽を設置・撤去する際には、市町村へ届け出が義務付けられています。
- 設置時:建築確認申請と同時に「浄化槽設置届」を提出
- 撤去時:撤去工事の完了後に届け出
2. 定期メンテナンスが義務付けられている
福岡市では、年1回の定期点検・清掃が義務とされています。
- 保守点検:機器の点検や消毒剤の補充
- 清掃:汚泥の抜き取り
- 法定検査:使用開始後3~5か月以内、その後は年1回
3. 使用上の注意
- 殺菌力の強い洗剤は避ける(微生物が死滅する恐れ)
- 異物を流さない(ティッシュ・油・生ゴミなど)
- ばっ気装置の電源を切らない(処理機能の低下)
7. 専門業者選びのポイント
- 実績と経験が豊富か(施工実績が多い業者を選ぶ)
- 迅速な対応が可能か(メンテナンス対応の速さも重要)
- 必要な資格や許認可を持っているか
- 複数業者の見積もりを比較する
まとめ
建築予定地が下水道処理区域外かどうかを事前に確認し、適切な浄化槽を選ぶことが重要です。助成制度を活用することで、コスト負担を抑えることも可能です。建築会社や自治体へ早めに相談し、スムーズに建築計画を進めましょう。
? 下水道が整備されていない地域での排水処理はどうすればいいですか?
下水道が未整備の地域では、一般的に「合併処理浄化槽」を設置して排水処理を行います。この浄化槽は、生活排水を処理し、環境への影響を最小限に抑える役割を果たします。設置には、地域の条例や補助金制度を確認し、適切な手続きを行うことが重要です。
? 浄化槽の設置費用や維持管理費用はどのくらいかかりますか?
設置費用は、浄化槽の種類や設置条件により異なりますが、一般的には数十万円から百万円程度が目安です。維持管理には、法律で義務付けられた定期点検や清掃が必要で、年間で数万円程度かかることがあります。
? 浄化槽の設置にあたって、補助金や助成金は利用できますか?
多くの自治体で、浄化槽の設置に対する補助制度が用意されています。申請には条件や手続きがあるため、早い段階で自治体の担当窓口に相談し、制度の内容や申請方法を確認しておくことが大切です。
? 浄化槽の設置に関して、どのような手続きが必要ですか?
-
設置計画の立案
-
自治体への申請・届出
-
専門業者による設置工事
-
使用開始の届出と維持管理の準備
地域により手続きが異なる場合があるため、自治体または専門業者に確認してください。
? 浄化槽の維持管理で注意すべき点はありますか?
-
定期的な点検・清掃の実施(法律で義務)
-
油脂類や大量の洗剤の排出を控える
-
異常があればすぐに専門業者に相談
詳細な情報や具体的なアドバイスについては、弊社設計士までお尋ねください。
文責 監修者 長崎秀人
福岡県の注文住宅専門の設計事務所「長崎材木店一級建築士事務所」の代表。宅建業も営み、業界歴は35年に及び、建築士・宅地建物取引士の資格を持つ。明治30年創業の同社は、設計から施工、不動産取引まで幅広く手掛け、公正なサービス専門性と実績に基づく信頼性の高い情報を提供している。
私たち長崎材木店一級建築士事務所は、“より美しく、すみ継ぐ”という思想のもと、福岡で自然素材の注文住宅を、設計から施工まで一貫して手がけています。ただ家を建てるのではなく、暮らしをかたちにすることを何より大切にしています。「福岡で家を建てるなら、長崎材木店 一級建築士事務所」──そう言っていただけるように。