ビジネスマンと住宅模型
──「何のために家を建てるのか」を忘れないために
2025年最新版|福岡で注文住宅を建てる方へ
家づくりの相談を受けていると、ときどき聞く言葉があります。
「それだと固定資産税が高くなるんですよね?」
「だったら、もっと安い仕様でいいかな…」
その気持ちは、よく分かります。
税金は安いに越したことはない。けれど、それで本当に欲しかった家から遠ざかってしまったとしたら?
──そもそも、何のために家を建てるのか。
そこを見失ってしまっては、せっかくの家づくりが数字合わせの“取引”になってしまいます。
新築住宅は完成後、市町村が実施する「家屋調査」によって、建物の評価額(=課税額のもとになる金額)が決まります。
評価額が高くなる要因を知っておくことで、「知って選ぶ家づくり」ができるようになります。
延床面積が広い
無垢材や自然素材など上質な素材
床暖房・全館空調・乾燥機などの設備充実
外構(塀、ウッドデッキ、カーポートなど)
屋根一体型の太陽光発電システム
高性能断熱・高耐久構造(外張り断熱・ベタ基礎等)
ビルトインガレージやロフト、小屋裏収納など
固定資産税が上がるということは、それだけ良質な素材が使われているということ。
つまり、家の本質的な豊かさや暮らしの質が上がっている証でもあります。
評価額を下げるために素材や設備を落とすことは、
「維持費が安くなる代わりに、心の満足度を失う」ということにもなりかねません。
家とは、一生に一度の生活の舞台装置です。
家族の時間を重ね、思い出を刻み、心の拠り所となる「暮らしの容れ物」。
税金を抑えることは大切かもしれません。
でも、それが**「本当に住みたい家」を妥協する理由**になってはいけない。
大切なのは、評価額の上下ではなく、
その家に、どれだけ「自分らしい価値」が宿っているか。
新築住宅の建物評価は「再建築価格方式」で算定されます。
これは、その建物と同じものを再び新築した場合にかかる工事費を基準に、原価をベースに評価額を出す方式です。
まず基本となる式はこちら:
固定資産税額 = 固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率)
そこから「経年減価補正」などが入り、最終的な評価額が決定されます。
面積(延床面積・階数)
屋根材(瓦・ガルバリウムなど)
外壁材(サイディング、左官、板張りなど)
内装(フローリングの材質、天井・壁の仕上げ)
設備(トイレ、風呂、キッチン、空調など)
基礎(ベタ基礎 or 布基礎)や断熱仕様
それぞれに「点数(単価)」が割り振られる(材質ごとに国が定めた基準単価)
延床面積 × 単価 + 設備点数を加算した「再建築価格」が算出される
そこに経年補正をかけて「評価額(課税標準)」が決まる
参照 総務省 自治税務局 資産評価室 「固定資産評価のしくみについて (家屋評価)」PDF
ここで具体的な数値を示します。
延床面積:30坪(約99㎡)
総工事費:約1,800万円
評価額:約900万円
固定資産税:900万円 × 1.4% = 126,000円/年
延床面積:30坪
総工事費:約2,400万円
評価額:約1,200万円
固定資産税:1,200万円 × 1.4% = 168,000円/年
延床面積:30坪
総工事費:約3,000万円
評価額:約1,500万円
固定資産税:1,500万円 × 1.4% = 210,000円/年
グレード | 評価額(概算) | 税額(概算) | 年間差額 |
---|---|---|---|
ローコスト | 900万円 | 126,000円 | – |
中間グレード | 1,200万円 | 168,000円 | +42,000円/年間 |
高性能・高仕様 | 1,500万円 | 210,000円 | +84,000円/年間 |
※あくまで目安です。評価額は市町村・仕様・面積によって変動します。
固定資産税の建物評価に関する具体的な基準は、法務局が定める「新築建物課税標準価格認定基準表」によって定められています。この基準表は、建物の構造や用途に応じて、1平方メートルあたりの単価が設定されており、評価額の算出に用いられます。
福岡法務局が公表している令和6年度の基準では、以下のような単価が設定されています:houmukyoku.moj.go.jp
木造住宅(居宅):1㎡あたり約107,000円〜121,000円
軽量鉄骨造住宅:1㎡あたり約130,000円
鉄筋コンクリート造住宅:1㎡あたり約166,000円
これらの単価は、建物の構造や仕様により異なります。詳細な数値や他の構造に関する情報は、福岡法務局の公式サイトで公開されている「新築建物課税標準価格認定基準表」をご参照ください。
建物の評価額は、以下の計算式で求められます:
評価額 = 1㎡あたりの単価 × 延床面積 × 経年減点補正率
1㎡あたりの単価:前述の基準表に基づく
延床面積:建物全体の床面積
経年減点補正率:建物の築年数に応じて減価される率nta.go.jp+1houmukyoku.moj.go.jp+1
例えば、木造住宅で延床面積が100㎡、築年数が10年の場合、評価額は以下のように算出されます:
評価額 = 107,000円 × 100㎡ × 補正率
補正率は、建物の築年数や構造により異なります。詳細な補正率については、固定資産評価基準に定められています。
評価額が算出された後、固定資産税は以下の式で計算されます:
固定資産税額 = 評価額 × 1.4%(標準税率)
例えば、評価額が1,070万円の場合、固定資産税額は約149,800円となります。
新築住宅には、一定の要件を満たす場合、固定資産税の減額措置が適用されることがあります。例えば、長期優良住宅や耐震・省エネ性能を有する住宅などが対象となります。詳細な要件や手続きについては、こちらの福岡市の公式サイトをご確認ください。
固定資産税の評価額は、建物の構造や仕様、築年数などにより大きく変動します。家づくりを検討される際は、これらの要素を踏まえて、将来的な税負担も考慮することが重要です。具体的な評価額のシミュレーションや詳細な情報が必要な場合は、専門家への相談をおすすめします。
新築住宅の特例措置として、以下のような減額制度があります(住宅用地にもあり):
床面積が50㎡以上280㎡以下の一般住宅 → 建物評価額の1/2が減額
期間:3年間(3階建て以上は5年間)
認定長期優良住宅は**5年間(3階以上は7年間)**に延長される
たとえば、評価額が300万円高くなったとしても、税金の差は 年間4万円程度。
「無垢の床の温もり」「静かな断熱性」「耐久性の高い家」を得られるなら、むしろ安い出費と考えるべきだという考え方もあります。
Q1. 固定資産税評価が一番高くなるのはどんな家?
広くて、無垢材・塗り壁など自然素材を使った家
床暖房・全館空調・屋根一体型ソーラーなど設備が豊富な家
ビルトインガレージや外構がしっかりしている家
Q2. 節税のために素材を変えるべきですか?
単に税金を下げるために素材を妥協するのは本末転倒。
自分にとって何が必要で、何が不要かを見極めることが大切です。
Q3. ロフトや吹き抜けも課税対象?
ロフトや吹き抜けは延床面積に含まれない場合もありますが、仕上げ材や構造によっては加点対象になります。
Q4. 太陽光発電は評価対象ですか?
屋根と一体化しているタイプは評価対象になりますが、据え置き型は対象外です。
Q5. 家を建てた翌年から課税されるの?
はい。建物が完成した翌年の1月1日時点での所有者に対して課税されます。
数字だけを見れば、高くつく家かもしれない。
けれど、その家で育つ子どもの背丈の印、
冬にあたたかく過ごせる安心感、
夕暮れ時の木の香り、
そういう“かけがえのないもの”が、評価額には含まれていません。
税金よりも、自分の人生に対してどれだけ価値ある家かを考えてみてください。
その答えは、きっと「固定資産税」では測れないはずです。
▪️さらに詳しくは弊社顧問税理士等、専門家チームへご相談を。
文責・監修:長崎秀人
福岡県の注文住宅専門の設計事務所「長崎材木店一級建築士事務所」代表。
業界歴35年、建築士・宅地建物取引士資格保有。
設計から施工、不動産取引まで一貫対応する体制で、信頼性の高い住まいづくりを支え続けている。