窓まわりを考えるとき、多くの人はカーテンやブラインドなど室内側から考え始めます。
しかし、本来の順番は逆です。
私は窓まわりの設計には、次の五つのステップがあると考えています。
つまり、室内のカーテンは最後の仕上げに過ぎません。
日本では昔から「南向き信仰」があります。
しかし実際には、北側の窓ほど美しい光が入る場所はありません。
北側の光は一日を通して安定しており、直射日光がほとんど入りません。
絵画や美術館の展示室、建築家のアトリエに北窓が多い理由もここにあります。
北側では日射遮蔽はほとんど不要です。
むしろ景色を切り取る大きな窓を設け、ブラインド程度で視線だけを調整する方が豊かな空間になります。
朝日を取り込む窓です。
朝日は体内時計を整え、気持ちよく一日を始めることができます。
夏でも午前中なので西日ほど厳しくありません。
寝室やダイニングには非常に相性が良い方位です。
必要以上の遮蔽よりも、柔らかな採光を活かす設計を優先します。
もっとも設計力が問われる窓です。
南側は冬には太陽高度が低く、室内まで日差しを取り込めます。
一方、夏は太陽高度が高くなります。
ここで重要なのが軒です。
適切な軒の出があれば、
夏は日差しを遮り、
冬は日差しを取り込むことができます。
つまり、
軒そのものが季節を判断する装置になるのです。
南面では室内側で遮るより、
軒による日射制御が最優先になります。
もっとも注意が必要な窓です。
西日は午後になってから低い角度で差し込みます。
そのため軒ではほとんど防げません。
夏の西日は室温を一気に上昇させます。
ここでは
・縦ルーバー
・ブリーズ・ソレイユ
・落葉樹
・簾
・外付けスクリーン
など外部遮蔽が非常に効果的になります。
西面だけは、
「窓を大きくしない」
という判断も重要になります。
最近は設備ばかり注目されますが、
実は最も省エネなのは軒です。
電気を使わない。
故障しない。
メンテナンスもほとんど不要。
何十年も働き続けます。
90cm〜120cm程度の軒があるだけで、
夏の室内環境は驚くほど改善されます。
日本建築が深い軒を持っていた理由は、
見た目ではなく、
気候への知恵だったのです。
植栽は単なる庭づくりではありません。
建築設備の一部です。
例えば落葉樹。
夏には葉が茂り、
強い日差しを和らげます。
冬になると葉が落ち、
暖かな日差しを室内へ届けます。
自然が季節を判断してくれるのです。
一方、
常緑樹は一年中視線を遮ります。
道路側には常緑樹。
南側には落葉樹。
この組み合わせだけでも住み心地は大きく変わります。
日本には昔から簾(すだれ)がありました。
実はこれは非常に優れた日射遮蔽装置です。
現代ではそれが
外付けルーバー
ブリーズ・ソレイユ
外付けブラインド
へ進化しています。
共通しているのは、
熱を家の中へ入れる前に止めることです。
これはエアコン効率を考えても最も合理的です。
外部で十分な日射対策ができていれば、
室内側は快適性を整える役目になります。
例えば、
レースカーテンは柔らかく光を拡散する。
ブラインドは光の量だけ調整する。
ロールスクリーンは夜間だけ閉める。
ハニカムスクリーンは寒冷地で断熱を補う。
それぞれ役割が違います。
重要なのは、
一つの商品ですべてを解決しようとしないこと。
役割を分担させる方が、
快適性も美観も向上します。
景色がない場所に大きな窓は必要ありません。
必要な場所だけ大きくする。
不要な場所は思い切って小さくする。
その方が断熱性能も向上します。
窓は壁に穴を開けることではありません。
一枚の絵を切り取ることです。
隣家を見る窓より、
一本の木を見る窓の方が豊かな暮らしになります。
設計とは、
景色を設計することでもあります。
家具を置いてから窓を考えるのではありません。
窓が決まれば、
家具の配置も自然と決まります。
暮らしは窓から始まります。
窓が美しく見えない原因の多くは、
レールやボックスの納まりです。
天井埋め込みやカーテンボックスを利用すると、
窓は驚くほど美しく見えます。
細部こそ建築の質を左右します。
意外と見落とされるのが網戸です。
最近では黒色ネットが主流になっています。
黒い網は視界への映り込みが少なく、
景色が非常にきれいに見えます。
窓から見える景色まで考えるなら、
網戸の色も重要な設計要素です。
住宅とは壁をつくることではありません。
自然との距離を設計することです。
光をどこまで取り入れるか。
風をどう流すか。
視線をどう切るか。
熱をどこで止めるか。
そして、どんな景色を暮らしの中へ招き入れるのか。
これらすべてを決めるのが窓です。
私は、窓は単なる開口部ではなく、
自然と人をつなぐ最も重要な装置だと考えています。
これから家づくりをされる方には、ぜひ「どんなカーテンを付けるか」ではなく、「どんな暮らしを窓から取り込むか」という視点で窓まわりを考えていただきたいと思います。
その視点が、住まいの快適さと美しさを大きく変えてくれるはずです。
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